ときめきのクジャク騒動

 ゴールデンウィークもあっという間に過ぎ、いつもの日常がはじまってあくせくしていたところ、クジャク脱走のニュースがありました。前回「動物が逃げるニュースが大好き」と書いたとたんに、まるで読んでくれていたかのように、クジャクが珍騒動を起こしてくれたのです。ニュースで見聞きされた方もいらっしゃると思いますが、あまりにもツボにはまった笑えるニュースだったので、今日は新聞記事を参照しつつ、その話を書きます。

 事の起こりは5月6日、千葉県八千代署への50代女性からの通報でした。

八千代署によると、6日午前11時45分ごろ、同市大和田新田の女性から「クジャクが庭にいて、追い払っても逃げない」と通報があり、駆けつけた署員が捕まえた。クジャクは体長約90センチ、雄とみられるという。飼われていた場所から逃げ出したり、捨てられたりした可能性もあるとみて、拾得物として一時的に保管し、3カ月以内に持ち主が現れれば返却する。(5月8日 共同通信)


 実害を被ったわけではないのだから、無理に追い払わなくても・・・という気もしますが、突然庭にクジャクがいたらやっぱり驚きますよね。今回色々調べていたら、この女性のお孫さんのブログも発見!

うちのおばあちゃんの庭にクジャクが現れて、ニュースになりました。
おばあちゃんは最初「冠のついたキジだ」と思ったそうです。

って。通報女性もなかなかのナイスキャラです。さて、警察は捕まえたクジャクをあろうことか、逃がしてしまいます。

千葉県八千代市の住宅の庭先で見つかり、八千代署が捕獲していたクジャクが、保管していたかごから“脱走”していたことが8日分かった。八千代署によると、8日午後1時半ごろ、同署裏の駐車場で、テレビ局がかごに入れた状態のクジャクを取材。午後2時半ごろに撮影が終了し、署員がかごに毛布をかけようとしたところ、突然クジャクが暴れ、はずみでかごのフックがはずれて扉が開き、“脱走”したという。署員らは民家の屋根伝いに移動するクジャクを追ったが、署から約200メートル離れた地点で見失い、日暮れとともに捜索を終了した。 (5月9日 産経新聞)


 凶悪犯を逃がしたわけではないのだからよしとするべきなのでしょうか?それともクジャクくらいちゃんと捕まえられずにどうする!と怒るべきなのでしょうか?この文字どおりの「大トリモノ」の目撃したという人のブログもあって、

大きい鳥が逃げてて、屋根に上った警察官が網を広げて捕まえようとしてたけど、失敗してました

 あ〜あ。ブログやツイッターでは、失態もこうして全部公表されてしまうんですね。その後、このクジャクは捕獲されるのですが、今度は飼い主が2人名乗り出てしまいます。

千葉県警八千代署は10日、同署から8日に逃げ出したクジャクを捕獲したと発表。「4月30日ごろ、飼っていたクジャクが逃げた」と9日夜に同署に連絡した茨城県神栖市の男性に確認を求め、模様などから男性が所有者と判明したとも説明した。
だが捕獲から約3時間後に、千葉県八千代市の別の男性が「飼っていたクジャクに逃げられた」と名乗り出た。このため同署は当初の発表をいったん取り消し、所有者を慎重に確認することにした。
予想外の事態に「捕まって良かった」と胸をなで下ろしていた同署は「ほかにもまだいるのか」と困惑気味だ。
名乗り出たのは、いずれも自宅でクジャクを飼育し、「今月3〜4日にいなくなった」という八千代市内の会社社長と、「4月下旬に2羽が逃げた」という茨城県神栖市のこちらも会社社長。2人は10日、自分のクジャクの写真を同署に持参したが、署員は「どちらの写真も捕獲したクジャクと似ていて、判断できなかった」。金木義人副署長は「ほかにも名乗り出てくる人がいる可能性があるので、しばらく預かり、今週中にははっきりさせたい」と話していた。
男性2人はクジャクの捕獲後、すぐに八千代署を訪れて対面。クジャクを前に「どちらのなんでしょうねえ」と穏やかに語り合っているという。(5月10日読売新聞)



 八千代署の皆さんは懸命にお仕事されているのでしょうが、なんだかマンガみたいな展開です。それにしてもクジャクを飼っていて、しかも逃げられているなんて人がそんなにいるはずない、どちらかひとりはウソをついてる!と疑っていた私は反省します。けれど

「ほかにも名乗りでてくる人がいる可能性があるので」

って、さすがにそれはないでしょう?けれど、あらゆる可能性を考慮する、というこの考え方こそ捜査の基本なんでしょうか?

「どちらのなんでしょうねえ」と穏やかに語り合っている

ここ、和みました。二人とも社長さんだけあって太っ腹なのかなあ。譲りはしないけど、絶対自分のだ!とかケンカはしないんですね。昔はお金持ちは錦鯉を飼っていたと思うのですが、今はクジャクがステータスなのかな?その後結局、

千葉県警八千代署で保管中に逃げ出し、10日に捕獲されたクジャクの飼い主が、同県八千代市に住む会社社長の男性と確認され、12日にも引き渡されることになった。
この男性と茨城県の会社社長男性が10日、クジャクの写真を持参して同署を訪れ、飼い主と名乗り出た。
2人とも「自分のクジャクと似ている」と譲らなかったが、その後、茨城県の男性のクジャクは茨城県警鹿嶋署で保護されていることが判明したという。( 5月11日読売新聞)



 ということで、一件落着!愛鳥週間前にちょっと和み系ニュースでした。と思いきや、美味しいオマケがもうひとつ。

千葉県警八千代署に雄のクジャク1羽が6日、拾得物として届けられ、茨城県神栖市の男性と千葉県八千代市の男性が飼い主として名乗り出る“クジャク騒動”──10日になって鹿嶋署に別の2羽が届けられ、この2羽は神栖市の男性の飼っていたクジャクと判明し、3羽はそれぞれ無事に飼い主が見つかった。
鹿嶋署に届けられた2羽は雄と雌のカップルで、神栖市大野原のアトンパレスホテル内の結婚式場に迷い込み、「幸せを呼び込むクジャク」として人気を集めていた。
同ホテルによると、5日午後、従業員が結婚式場の中庭を闊歩(かっぽ)する色鮮やかなクジャク1羽を発見。その後、式場内に入り込んでいるところを同ホテルウエディングプランナーの野口貴久子さん(35)に見つかったが、「婚礼のおめでたムードにぴったり」とそのまま中庭に住まわせた。翌6日朝には、さらに1羽増えていたという。
2羽が寄り添って歩く様子や、緑の芝生との鮮やかな色合いに、来客から「とてもきれいで、お祝いしてくれているみたい」などと好評で、同ホテルではエサを与えるなどしてかわいがっていた。
そんな中、八千代署でクジャクが逃げ出していることを知った野口さんが10日、交番に通報。鹿嶋署員らが捕獲し神栖市の男性の元に返された。
男性は3羽のクジャクを飼育。八千代署に届けられたクジャクを、逃げた2羽のうちの1羽と勘違いしたらしい。同ホテルでは「飼い主が見つかって良かったが、少し残念」と複雑な表情を見せている。( 5月12日読売新聞)



 逃走中で身を隠しつつも(?)、かわいがられてエサまでもらっていたとは驚き&大笑い!単なる偶然なのでしょうが、結婚式場の庭なんて、よくもまあピッタリの棲家をみつけたものです。クジャクって意外に頭脳派なの?このクジャクがいるときに結婚式を挙げたカップルは、一生自慢できますね。写真でもあろうものなら完璧。「ほら、このつがいのクジャク。よそから迷い込んできてこの数日しかいなかったらしいし、テレビでニュースにも出たんだよ」とか言ってね。

 今頃は3羽ともそれぞれのお家に帰っていることでしょう。長々と書きましたが、私はこのニュースが最高に気に入りました。これまで見聞きしたどんなほかのニュースよりも、ほのぼのします。できることならドラマ化してほしいくらい。主役は八千代署でマスコミ応対していた副署長さんです。それにしても休日返上で捕獲作戦を行った八千代署の皆様、ほんとうにお疲れさまでございました。こうした動物の場合、ほんとうはすぐに保健所に引き渡してもいいんですって。人情で預かってくれていたみたいです。

 今度のお休みはクジャクを観に、動物園に行こうかなあ。

大越 康子