幻にあこがれて

 大雨が降って、急に涼しくなりましたね。夏のお疲れがでてはいませんか?
前回宣伝したYouTubeのPV「Moon River」、たくさんの方にご覧いただき、どうもありがとうございます。view数の伸びもよくて、嬉しい。それにしても、あまりにも突然に夏がいなくなったので、あっけにとられています。皆、「暑くて耐えられない」と言っていましたが、私はやっぱり暑いときのほうが調子がよかった気がします。これから冬に寒くなったら、私は「ほら、皆が暑い暑いっていうから、熱が怒ってどこかにいっちゃったんだ!」ときっと思うことでしょう。あと、暑い日に思い出すのは、子供の頃読んだSF小説。未来の地球で、気温が異常に上がりパニック状態になる、でも実はそれは主人公が見ている夢で、現実は異常気象で寒冷化が進み、凍死寸前だった、というもの。もしかしたら夢が冬で、現実が夏だったかもしれない。雑誌の付録についていた短いお話でしたが、今でもよく思い出します。そして「こんなに暑いのは夢なんじゃないかな」とか思ったりします。

 夢といえば、最近読んだ、川上弘美さんの「真鶴」には夢中になりました。発表時からの話題作が文庫になったのではじめて読んだのですが、ここ数年のなかでは、いちばんのお気に入りになりました。12年前に夫が失踪し、それが原因で精神を病みはじめた女性が、幻視や幻聴に苦しみながらも、真鶴を訪れることで回復にむかっていくというストーリーです。この女性がみている幻のイメージが、リアルで素晴らしい。(みえない幻がリアルって変ですが、もし幻がみえたら、きっとこんなだろうなあ、と思えるのです)ほんとに幻がみえるようになったら、よくないのでしょうけれど、幻ってなんて魅力的なのでしょう。そういえば、これもまたずうっと前、高校時代に読んだ小説に、やはり精神を病んだ女性がいだく幻の描写がありました。それは「自分の体のなかの骨にそって万国旗が飾られていて、綺麗にはためいている」というもの。タイトルもストーリーも忘れてしまったのに、この箇所だけはよく覚えていて、なんて素敵なイメージだろう、と思っています。

 精神を冒された人の幻に感激するのは、少し変かな。そういわれれば、学生時代、
精神科ソーシャルワーカー(PSW:Psychiatric Social Worker)になる勉強をしていたのですが(堅い学校にいたのです)3週間、精神科の病院で実習したあとで、先輩のワーカーさんから「大越さんの感性はワーカー側よりも、患者さんに近いかも」と言われたのでした(実話)。もしかしたら、傷つくべきところなのかもしれませんが、当時は演劇にどっぷりはまっていたので、「そのほうが芸術的で(?)カッコイイ」なんて思ってました。いいかげんですね。結局、その方面の仕事には就かなかったのだけど、実習は非常に貴重な経験をさせていただきました。

 なんだか妙な話になってしまいました。これも皆「真鶴」を読んだせい。まだ半分、あの世界にトリップしているのでしょう。でもライブも近づいてきたし、風邪をひかないよう気をつけて、しっかりしなくちゃ。10月8日(金)ふた月に一度、出ている御徒町アリエス、お蔭様で出演10周年を迎えます。10年前の初出演は、1stCD「Only You」の発売祝ライブでもありました。いろいろなことがありましたが、こうして出演しつづけられるのは皆様の応援のおかげです。サウンド面でも、最近はスキャット入りのテイクファイブなどの熱いナンバーも取り入れて充実してきたかな、と思っています。どうぞ皆様、8日もお気軽に遊びにいらしてくださいね。と、また宣伝になってしまいましたが、ほんとうに心からお待ちしています。お祝いライブなので、盛り上がっていきたいな。どうぞよろしくお願いします☆

大越 康子