れんげ荘

☆ 暑中お見舞い申しあげます ☆

 7月も今日で終わり。雨も降って寒いくらいですが、お元気でしょうか?私は「もっと暑いほうがいいのになあ・・・」などとぼやきながら、お蔭様でいつもどおりマイペースでやっています。7月半ばに秋田に帰省したのですが、フェーン現象で35度近くもあって、びっくりでした。もっとも東京も明日からはまた暑さが戻ってくるようで、まだまだ夏はこれからですよね!(←なんの予定もないのですが、好きな季節なのではりきっているのです)「この夏はとにかく節電に協力しよう」と、普段にも増して努力した結果、先月の電気代はここに引っ越してきて最低でした。やったあ!もはや「節電に協力」というよりも、単に「節約できて嬉しい」といった感じになっています。でもまあ、いいことですよね?

 さて節約といえば、最近はまって何度も読み返している小説がありまして。群ようこさんの「れんげ荘」。れんげ「草」じゃなくて「荘」。築40年も経つ、安アパートの名前です。主人公のキョウコは、虚業に疲れ果て、有名広告代理店を45歳で早期退職。見栄っ張りの母親の元を離れ、貯金を切り崩し、月10万円でれんげ荘でひとり暮らしをはじめます。家賃3万円のれんげ荘は、梅雨時は外よりも湿気がひどくナメクジまで現れ、冬はすきま風が入り、ただならぬ寒さ。でも、キョウコのほかに暮らす人たちもみな、個性的でお洒落。生活は不便だけれど、自然が感じられ、質素ななかにも本当の贅沢を味わうことができて、、、といった内容。読んでいて、映像が目に浮かぶようで、シンプルな生活が心地よいものに感じられるのです。前にも書きましたが、私も学生時代に一年間だけ寮で暮らしたことがあるので、その体験と懐かしく重ね合わせているのかもしれません。そのときは大学の女子寮で、6畳に3人で暮らしていたので、ひとりあたりの面積でいえばキョウコよりも劣悪な環境でしたね。やっぱり築40年以上経つ木造2階建てで、ナメクジはわからないけれど、ムカデが出て、お風呂(もちろんこれも共同の大風呂です)に入っていたら、天井からムカデが落ちてきて刺されて、赤くはれあがった!と言っている先輩もいたっけ・・・。そんなわけで、実際には虫が出たり、湿気でカビがはえたりすれば心穏やかな生活どころではないのですが、それでもキョウコの生活、憧れます。人間関係に気疲れすることもなく、自由に使えるお金が少ないかわりに特にしなくてはいけない何かがあるわけでもなく。

 まあ現実的には10万円のうち、家賃が3万円でも、国民健康保険と国民年金だけであと2万円近くかかってしまうし、ほんとに大丈夫?テレビでは時々、タレントさんが「一ヶ月1万円生活」なんていう番組をやっているけれど。病気でもしたら10万円では無理じゃない?なんてつい真剣に考えてしまいます。それに、いくら空しい仕事に疲れ果てたから、といえ、ずっとアルバイトもボランティアも趣味の活動も何もせずに暮らすのは、つまらなさそう。まして一人暮らしで話相手もいないし。散歩と図書館通いくらいであとは家にいるんじゃあ、からだもアタマもなまってしまいそう。でもまあ小説ですしね。実現可能かどうかは別として、こういう願望を持っている人は多いんじゃないかなあ。ドラマ化してほしいなあ。と思い、勝手にキャスティングを考え始めたら、やはり群ようこさん原作で、映画化された「かもめ食堂」の影響があってか、小林聡美さん、もたいまさこさん、といったおなじみの俳優さんたちが思い浮かんでしまいました。これじゃあ「かもめ食堂」と同じだし、ストーリー事体にそれほど緩急がないので、やっぱり映像化は難しいかな?

 キョウコと同じ生活をするのは無理だけれど(湿気や虫や節約に耐えられるとしてもキョウコと違って私には切り崩せる元手の貯金がない!)、少しでもシンプルな生活に近づくためにせめて、《断・捨・離》をしよう。6畳に3人でいたときのことを思えば、もっとモノを減らせるはず。いらない物事をできるだけ整理して、やりたいことをして生きていきたいなあ、と思うこのごろです。

大越 康子