遊んでくれてありがとう

 今年も残り20日余りとなりました。底冷えのする寒さですが、お変わりありませんか?11月はまたしても書けなくてごめんなさい。お陰様でとても忙しくしていました。でも風邪もひかず元気にしていますので、全国約6名(少〜し増えた?)のつれづれファンの皆様どうぞご安心ください。さて、12月2日に行われたアリエスでのクリスマスライブは大盛況のうちに無事終了、ご来場いただいた方、応援メッセージをくださった方、ほんとうにありがとうございました。予想をはるかに上回る大入りで、お席が窮屈だった方、申し訳ありませんでした。先月忙しいなかを頑張って、府中・大國魂神社の酉の市に出かけ、商売繁盛祈願をした甲斐がありましたね(?)。よい形で今年の座長公演を締めくくれて、嬉しいです。でも年末までステージは続くので油断大敵。最大のイベントは22,23日の札幌でのライブ。2003年から続いている北海道でのライブ。今年もお声がけいただきました。私が行くと「記録的大雪」だの「季節外れの最低気温」だのとんでもない天気になることが多いのに、それでも呼んでいただけるとはほんとうにありがたいことです。22日は素敵な喫茶店でのライブ、23日は人気のフレンチレストランでのディナーライブ。エレガントで心温まるクリスマスステージを、と準備中です。お近くの方、どうぞいらしてくださいませ。とライブ報告と宣伝が終わったところで、今日の本題。猫に遊んでもらった話。

 11月のある日の夕方。ピアニストSさんのスタジオにリハーサルに行きました。
 郊外にあるマンションの2階がスタジオで、ピアノ教室になっています。もう夕方ですっかり暗くなっていて、けっこう寒い。インターフォンを押しても、誰も出ません。少し早かったかな・・・?と近所をぶらぶらしてから、もう一度。やっぱりいない。Sさんの携帯に電話すると「ゴメンゴメン!ちょっと隣の町まで出たら、電車が事故で止まっちゃって。悪いけどそこで待っててくれる?」急いでいないからいいんですが、他の部屋の住人もそろそろ帰ってくる頃で、ドアの前にいるのもなんだかなあ、、、とマンションの前で待つことにしました。夕時なので、隣の家におすそわけを持ってくる主婦(らしき女性)がいて、そこの家の人と玄関先で立ち話を始めました。道路脇の電柱の横に、真っ赤なコートに黒いブーツで立っている私をチラチラみながら。それは確かに郊外の住宅街には似つかわしくないかもしれませんが、怪しい者じゃないんですよ、ほら、お隣のピアノスタジオに来たんです、とおもむろに楽譜をとりだして眺めはじめたりする私。(でも暗いし、おしゃべりしている二人に楽譜だとわかったかどうかはかなり微妙。)

 するとそこへどこからか、小さくて可愛い三毛猫がやってきました。おすそ分けの匂いにつられてか、まずは主婦二人の足元にまとわりつき、しきりに家の中の様子をうかがっています。近所の猫なのか、主婦たちも気にするふうでもなく、相手にしません。猫もつまらなかったのか、今度は私のほうへ。手持ち無沙汰でいた私が「可愛いねえ。どこから来たの?」などと話しかけると喜んだのか、足元にひっくりかえるので、お腹や喉を撫でる。ゴロゴロ喉を鳴らして私の足元をぐるぐる回るので、撫でながら「ねえ、私最近、いろんなことがあってねぇ」「Invitationっていう曲知ってる?渋いけどカッコいい曲だから歌いたいんだけど、シャカタクのじゃないよ」などととりとめもなく話しかけるけれど、もちろん答えはなし。でも、気に入ってくれたのか離れずに、ずっとそばにいてくれる。可愛いし、あったかいし、時間つぶしにもなって大助かり。と「ごめん、遅くなって〜」と帰ってきたSさんが階段を上がっていくと猫もピッタリ付いてきて、あけたドアの隙間からささっと中へ。そして打ち合わせをしている間じゅう、部屋じゅうを(ピアノの上まで!)ぐるぐると探検。最後には納戸をSさんに開けさせ、中を隈なくチェック。やっと気が済んだのかドアの前にお座りしてニャアニャア啼きつづける。「ああ、終わったみたいね」とSさんがドアを開けると、またささっと出て行ってしまった。「ああっ猫ちゃん、遊んでくれてありがとうね!近所の猫なんですか?名前は?」と聞くと、Sさん「どこの猫かも名前もわからないけれど、ときどき来ては、最後に納戸をチェックして出て行くの」ですって。見回り?なぜ納戸が最後なのかわかりませんが。今日は見回りにきたら赤いコートの怪しげな女がいたので、調べていたのかも。その後、親分猫に「ピアノ教室にみかけない女が来て、なにやら横文字の歌を歌ってましたが、まあたいしたヤツではなさそうです」なんて報告してたかも。リハーサルが終わって、スタジオを出たときには、もう猫の姿はどこにもありませんでした。ほんとうのお家に帰ったのかな。

 猫って不思議。大分前に見た猫のテレビを今も覚えていますが、番組のスタッフがある飼い猫を24時間観察しているのです。それである日飼い主に「お宅のミケちゃんは、昨夜、公園に行ってましたよね?」と聞くと、飼い主は「いえいえ、ミケちゃんはずうっとお家にいましたよ。誰も夜に外に出したりしませんから」とキッパリ答えるのですが、実際はやっぱり夜遅い時間に家を抜け出て、公園での猫会議に出席していたのです。もうひとつ、ある家で「クロ」として飼われている猫が、よその家にも出入りしていてエサもしっかりもらい、「エリザベス」と呼ばれて可愛がられていたのでした。そのことを知ったクロ家の人々はびっくり仰天!「エリザベスぅ?オマエが?」これ本当に面白かったなあ。いいなあ猫って。役者でもないのに、一人、いえ、一匹でたくさんの人生を生きられる感じ。あるときは〇〇、またあるときは△△って。でも猫だからいいけれど、現実界の人間ではせいぜい二足のワラジをはくくらいかな?猫にとっては自分がクロだろうが、エリザベスだろうがエサさえもらえれば、どうでもいいのかもしれません。私もご飯を食べていければ名前はどうでもいいかも・・・?
 あれ、よくわからなくなってきました。でもとにかくあの日は遊んでくれて、どうもありがとう。今度はもう少し地味めな格好で行く(つもりだ)けど、また遊んでね。

大越 康子