前に住んでいたところの上の階には、3歳の男の子が住んでいました。ポストにもお名前がないので、苗字もわからず、私は勝手に「うえの坊や」と呼んでいました。なぜ年齢がわかるのかというと、すれ違って挨拶したとき「いくつ?」ときいたら、小さな指を3本立てて、「3才!」と答えてくれたからです。
少し前は、ベランダから外を眺めていると、坊やがママに手をひかれて、お散歩しているのがみえました。夏の暑い日、お散歩から帰ってきた風のママと坊や。マンションの入り口はすぐそこなのに、坊やがなぜか植え込みに興味をしめして、早く建物に入ろうとするママをそっちにひっぱっていったりする様子を、微笑ましく眺めていたのです。が、私がほとんど同じような毎日を繰りかえしているうちにも、坊やはどんどん大きくなり、いつのまにか幼稚園に通うようになりました。朝8時半、パパかママのどちらかと二人で、おしゃべりしながら階段をおりていく元気な声がきこえます。階段と廊下に反響して、何と言っているのかはっきりわからないのですが、ご機嫌で「これはね〜・・・」と話している日もあれば、ママに「自分で〇〇するって言ったんでしょ!」と叱られて、わあわあ泣きながら出かけていく日もありました。階段の高さが坊やには高いのか、はじめのうちは降りるときに一段、一段、ばたっ!ばたっ!という不器用な音が聞こえたものです。数ヶ月で聴こえなくなったのは、きっと背が伸びて、スムーズに降りられるようになったのでしょう。ある夕方は、となりのトトロの「歩こう〜♪歩こう〜♪」という歌を歌いながら、ママと帰ってきました。私がお父さんやお母さんに挨拶をするときには、大きな目を真ん丸くして、下から「このオバチャン、誰?」という顔で不思議そうに見上げています。一度、夕方会ったとき、なぜか上機嫌だった彼が私にいろいろと話しかけてきてくれたのですが、お母さんとの挨拶のほうに忙しく、何と言ってくれたのかわからずじまいだったのが惜しまれます。
また別の夕方、私が帰ってくると通りの向こう側から「待って!待ってよ!」という泣きそうな声が。「坊やだ!」先に家に入って、外の様子を伺っていると、ママに激しく叱られながら、大泣きして帰ってきました。「できるできないをハッキリ言わなきゃだめでしょ!」とママ。坊やはえっくえっくしながら、いったんは「ハイ」と答えたものの、「だって、〇〇が△△で・・・」と反論。が、ママはついに逆切れ(?)きれいなお母さんなのですが、「そんなのダメに決まってるでしょ!」と大声で叱りつけ、坊やはますます激しく大泣きしてしまいました。あまりにもいつまでも泣きつづけるので、下で聞いていた(ヒマ人ですね)私ももらい泣き。こんなに泣いて大丈夫かしら?トラウマになったりしないかしら?と心配しつつ、迎えた翌朝。坊やは「おじいちゃんが電車でね〜」とご機嫌におしゃべりしつつ、ママと出かけていったのでした。ああ、よかった!子供のいる友人にこの話をしたら、「子供なんてその瞬間だけを生きているんだから、そんなのすぐに忘れてケロッとしてるわよ」と笑われちゃいました。また、別のある午後は、坊やがちょっと年配の女性と手をつないで街を歩いているのを見かけました。それまでに見たこともないほど、甘えた表情でした。多分、おばあちゃんなのでしょう。ときどき怖いママよりも、おばあちゃんのほうが優しいのかも?あんなに安心しきって、甘えた顔を見るのははじめてで、すれ違ってから私もにこにこしていました。坊や、よかったね。そして、名前も知らないご近所の子供の嬉しそうな顔を喜べる自分も、少しは大人になったような気がしたのです。ほんとうに可愛らしくて、姿を見るのも、声を聴くのも、毎日とても楽しみでした。
先日引越したので、坊やと会えなくなってしまって、とても残念。引越す前日に、パパと階段をあがっていく声が聞こえたのが最後になってしまいました。今頃、どうしているかな?またママに反抗して、逆にもっと叱られたりしているかな?お歌上手だったな・・・などと思い出してしまいます。でも今度も近所に小さい子供がたくさんいるようなので、そのうちに仲良くなれるかも?それにしても子供の成長はめざましいですね。その間、私は何をしただろう、、、と反省しきりです。
変わり映えしない毎日を送っているようでも、年はとるもので、2月8日(金)の御徒町アリエスは毎年恒例の、私のバースデーライブです♪もちろん今年もバレンタインチョコレートのプレゼントつき☆おなじみのスタンダードジャズのほかに、ビージーズの'How
Deep Is Your Love〜愛はきらめきの中に〜’、ビートルズの’ノルウェイの森’などポップス曲のジャズバージョンも。大島渚監督に捧げて、前回好評だった’戦場のメリークリスマス・ボーカルバージョン’を今回も歌います。いちばん寒い季節で申し訳ないのですが、よかったらどうぞ遊びにいらしてくださいね。お祝いライブなので、より華やかで楽しいステージにしたいと準備中です。そして、3月14日(木)のホワイトデーは、新宿JJのライブで、チョコレートのお返しをお待ちしていますので(?)こちらもよろしくお願いいたします。それにしても、うえの坊やにバレンタインチョコレートを渡したかったなあ・・・☆
大越 康子
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