深夜の高速バス

 桜の花もほころび始めて、春はもうすぐそこですね。お変わりありませんか?年度末でお忙しい方も多いでしょうが、私は3月後半はレギュラー出演しているお店が1週間ほどお休みしていることもあって、ステージが少なく、のんびりしています。この2年間はずうっと忙しかったのでこんなに出かけなくてすむ日々は久しぶり。とはいえ、ステージ以外の雑務は山積みで、これじゃ休んだ気がしないよなあ・・・とぶつぶつ言いながら、ひとつひとつ取り掛かっています。そうこうするうちにメインライブ御徒町アリエス・春の巻は4月10日に近づき、そちらの準備や宣伝にもとりかからないと・・・。このまま仕事が少ないのも、気分はラクでいいけれど、お財布はラクでなくなるので、売り込みもしなくちゃ・・・などと、あいも変わらず、バタバタしているのでした。

 休みなくお仕事していないと不安というのは、ワーカホリックというよりは単に貧乏性なんです。私は前世でよっぱど貧しかったに違いありません。ほんとうは「数よりも質」で、たくさんお仕事することよりも、自分でも及第点をつけられるステージをもっと増やしたほうがいいことはわかっていて、そのためには、休むときにはしっかり休まないといけないはずなんです。でも、やっぱりあくせくしちゃうんだろうな、私は。
パーティー・イベントなどへの歌の出前、承りますので、機会がありましたら、どうぞお気軽にお声掛けくださいね!ピアノがなくても、ギターと二人でのステージができますので、よろしくお願いしますっ。と、またしても宣伝で失礼しました。

 さてお休みの間、深夜に帰宅する機会がないのですが、そうするとお楽しみがひとつ減ってしまうのです。それは、うちの近所にある深夜高速バスの停留所を眺めること。名古屋行き、仙台行きなどの乗り場があって、大きな荷物を抱えた人たちが並んでいて、添乗員さんが列を整理したり、携帯電話で道に迷っているお客さんを誘導したり、深夜にも関わらず、そこはたいそうにぎやかなのです。私は歌の仕事帰りは、譜面や着替え、販売用CDなどの大荷物なので、添乗員さんは「ハイ、仙台行き、○時△分発、×××高速バスはこちらで〜す」と、私にも視線をくれながら、大きな声で誘導してくれます。そのたびに「あ、まさにそういう感じの荷物ですが、ワタシは違うんです。ゴメンナサイッ」となぜか心の中で謝りながら、通り過ぎます。

 旅行なのか、帰省なのかわからないけれど、大きな荷物を持って並ぶ人たちを見ると、私も故郷・秋田に帰りたくなります。そのバス停は秋田行きではないのだけれど、一瞬でも故郷を思うことができて、またこれからバスに乗り込む人たちの(おおむね)楽しそうな様子を見ることができて、幸せな気持ちになれるのでした。今も毎日、あの停留所では旅人と添乗員さんがにぎやかにバスを待っているのだろうなあ。今週末からまたお仕事が始まるので、また旅が始まる前のあの雰囲気を味わえるのは嬉しいな。私も今度は深夜バスで帰省してみようかな。きっとすぐに、ぐっすりと眠ってしまうのでしょうけれど。

大越 康子