TVドラマ《お見合い放浪記》にはまる!


  テレビドラマに、はまった。
  といっても、前にも書いたが、うちにはテレビがない。NHK第一放送をラジオできいているだけ。(だったらテレビ買えばいいのに、ともよく言われるのですが、まああんまり見ないので)
  で、はまったドラマは、「お見合い放浪記」。原作・阿川佐和子。主演・水野真紀。
  これは、23時のNHKという枠組みで放送されている連続ドラマ。23時から15分ずつ、月曜から木曜まで放送され、週末の金曜にその週の分がまとめて放送される。
  この時間、うちにいない日もあるので、最初のうちは全然気に止めていなかった。はじめてきいたのは、先月のこの「つれづれ」を書きながら。BGMのようになんとなくラジオを流していたら、コメディータッチで笑える。笑えるのだけれど、31歳独身のヒロインのつぶやきがリアルで心ひかれる。
水野真紀さん演じる主人公の由寿(ゆず)は、かけだしのフリーの翻訳家。「お見合いして出会った相手と、恋愛してから結婚したい」という考えの持ち主。なかなか理想の男性と巡り会えず、30回以上もお見合いを続けている。きょうもまたお見合いで新しい男性と知り合うのだが・・・、という感じ。10月のはじめから連続20回。私が聴き始めたのは、およそ半分が終わったころだった。
  心ひかれたのは、まず、主人公の境遇(フリーで仕事をしていて、一人暮らし)が自分と似ているから。それともうひとつ。ヒロインを演じる水野真紀さんのファンになってしまったから。 それまでは、水野真紀さんという女優さんにあまり気をとめたことがなかった。もちろん、ドラマやCMで顔は知ってはいたけれど。お料理上手で、実際にお料理学校に通ったこともある、とかいうことだから、「お嫁さんにしたい女優NO.1」といわれているの無理はないなあ・・というくらい。そうそうCMでは、家電製品の「きれいなおねえさん」が有名ですね。
  だから、ほんと「きれいで、優しそうなお嬢さん的女優さん」くらいにしか思っていなかった
  でも、なんてすてきなコメディエンヌぶり!かわいく、ひたむきで、だけどちょっとおっちょこちょいで・・。ああ、真面目なだけでなくて、こういう役もできる人なんだー、と知り、嬉しくなったのでした。(きれいでかわいく、上品で、でもコメディーもできる女優さんって案外いないのでは?)

  また、番組が始まったのとほぼ同時期、週刊誌に、水野さんと原作者の阿川佐和子さんの対談が載っていて、これがまたとってもおもしろかった。
デビューしたいきさつから、恋愛のこと、仕事のこと、かなりオープンに語っていた。
  この対談を読んで、彼女に対する印象が変わったのは、私だけではないのでは。
  「おとなしいお嬢さん」というイメージが、「とてもしっかりしていて真面目で芯の強い女性」に変わった。 お料理学校も、そんじょそこらの教室ではなくて、お菓子づくりではイギリスのコルドン・ブルーに半年留学、お料理のほうは服部調理専門学校に一年通って卒業、と本格的なもの。ご本人の結婚については 「事務所にいつもスケジュールを入れられているOL女優としては、決まった仕事はやらなくちゃ、と思うし、事務所からも(結婚には)タイミングがあるから、と言われるとそうかなあ・・とも思うし」という答えだった。これまでおつきあいした男性からは「自分より仕事をする女性をはじめて見た」とも、言われたとか。OL女優などと言いつつ、どれだけ一生懸命彼女が仕事をしてきたかがうかがえて、せつなくなった。
  そんなオープンな素顔にふれて、番組もますます楽しみになり、夜仕事のない日は、もうラジオを集中してきいた。テーマソングから劇中のBGMまで、歌えるくらいに覚えてしまった。今回は音楽は本多俊之さん。どの曲もそれぞれのシーンにはまっていい感じなのだけれど、私がいちばん好きなのは、ちょっとしんみりした感じのスローの曲。しっとりしたシーンでよく使われたこの曲は、そのときどきで楽器が変わる。由寿と意中の相手とのダンスシーンではサックスで大人のムード。傷心の由寿を父親が励ますシーンではギターで優しく包み込むように。私はこのドラマを聴きながら、他人事とは思えず(自分がお見合いするわけではないですが)涙することも多かったけれど、それにはこの音楽が大きく影響していることがわかった。もし、ドラマはなくて、この曲をCDかライブできいたら、やっぱり泣く、と思う。じんわりくる曲なのです。と、いまここを書きながら、その曲を思い出すと、また泣けてきました。音楽の力ってすごい!NHKさん、ぜひサントラ盤の発売を!

  とにかくこの番組については、何もかも知りたい!と思った私は、はじめてNHKのホームページにもいってみた。番組内容などはあっさりとしか紹介されていなかったが、掲示板の視聴者からの感想が楽しく、夜更かしして読みふけった。やはりヒロインや私と同じ独身女性からの書き込みが多いよう。「私はお見合いで結婚しました」というものや、「ドラマと同じように何度もお見合いに失敗しています」というものも。「ラストは由寿ちゃんが結婚できて、ハッピーエンドにして」という声も多かった。が、阿川佐和子さんの原作どおり、ヒロインは最後まで独身、けれどお見合いを繰り返すうちに失恋はしたものの、人を愛することを知り、自分をみつめ、大人になっていく。私はこのラストがいちばんふさわしいように思った。自分も結婚していないからではないですよ。
  これが、いちばん原作者のメッセージを的確に伝え、なおかつ見ている(私の場合は聴いている、だけど)私たちに元気をくれる終わり方だったような。でも、他の皆さんの意見はどうかな?またあとでホームページを見てみようっと。

  とにかく、このドラマひとつから、いろんな楽しみが広がった。水野真紀さんのホームページもみたし、彼女の出しているお料理の本も本屋さんで眺めてみた。(「はじめてのお菓子」っていうのなら、私でも挑戦できるかな)このドラマの原作の文庫本も買って、一晩で読んでしまった。阿川佐和子さん関連では檀ふみさんとの共著のエッセイまで読んだ。そうそう、まだ調べていないけれど、由寿の親友役だった鈴木砂羽さんっていう女優さんも、お芝居が上手で魅力的だったなあ。他にはどんな活動をしているんだろう?
  音楽の本多俊之さんはあまりにも有名だけれど、彼の作品はサントラ盤以外でCDになったりしているんだろうか?などなど、ドラマは終わっても、楽しみは尽きない。なんて安上がりな芸術の秋(?)。

  そういえば、以前お会いしたお客様で「水野真紀さんのお父さんと同じ会社で働いている」という方がいらっしゃった。その人は「会社の同僚(上司だったかな?)に、水野真紀っていう女優の父親がいるんだけど、そういう役者知ってる? オレ、水野美紀なら知ってるんだけど・・・」と言ってました。「いやあ、すごく有名できれいな女優さんですよ」と答えましたが、今だったら「私大ファンなんです!」と言ったのに。どうかしたら、サインまでもらえたかもしれないのに??その後、そのお客様は関西のほうに転勤してしまったのでした・・。残念。お見合いと同じく、出会いはみんな一期一会なのですね。

 


大越 康子