巨大仏をみて思ったこと


 長かった夏もようやく終わり、日に日に秋が深まりますね。皆様お元気でしょうか?ふと気がつけば、もう9月も終わり。どうも最近はこのつれづれの更新が月末ギリギリになってしまってゴメンナサイ。いつも更新直後には、「次回こそ月の半ばまでにUPしちゃおうっと」と思って、ネタまで考えるのだけれど、そこはせっぱつまらないととりかからない私の悪いクセ。結局ギリギリになるまで書かないんでした。学生時代のテスト勉強も、いつもこのパターンだったなあ。卒論だって、お芝居をしていて、正味一週間くらいで書いたんだった。最後のほうは締め切りに間に合わせるために徹夜が続いて苦しかった〜。こういうだらしない性格って、意識して直さないと自然には変わらないものなのですね。言い訳はこれくらいにして、本題。

 とはいえ、つれづれなるままに、なんだから本題っていうほどのかしこまったものじゃない。本日のテーマは「巨大仏」です。は?なにそれ?とお思いでしょうが、きっかけは本屋さんでみつけた「晴れた日は巨大仏を見に」(宮田珠己・著)という一冊の本。テレビでも紹介されたらしいです。もともと、大船の巨大な観音様には妙に心挽かれるものがあった。知ってますか?大船観音。東海道線の電車の窓からみえる山の中にそびえたつ真っ白な観音像。はじめてみたときは、あまりの唐突さに「何あれ!」と大声をあげそうになったものだ。いやあ、見たら絶対びっくりしますって。あれは約25メートルだそうですが、風景から浮きまくっているんですから。

 それで、この「晴れた日は巨大仏を見に」は、日本各地に点在する巨大な仏像の鑑賞記録です。巨大仏の過剰な大きさが生み出す周囲の風景との違和感を楽しむのが醍醐味。日本全国に昭和の終わりから平成のバブル期にかけて、40メートル以上の大仏が10体も作られた。でもいくらお金がありあまっているからって、どうして仏像をばかでかく作らなくてはいけないのか。なんの意味があるのか。いや、この本はそういう理由を考えるものではないのです。著者は「巨大仏のある風景を見て、そのとき胸にわきおこるヘンな感触を、じっくり味わってみたい。そしてできることなら、そのヘンな感触の正体を解き明かしてみたい」と書きます。そうして全国津々浦々の巨大仏を編集者と訪ねながら、「こうした風景を楽しむ自分たちはお台場、六本木ヒルズなどのトレンディースポットには興味がない。主流な価値観にシンクロしきれない」と思ったりするのです。

 ここを読んで私は、なんだかいろんなことがすうっと納得できた気がしました。そうそう、私も主流な価値観、というとカッコいいけど、「普通こうあるべき」みたいな考えにはついていけないのです。ついていけないのか、ついていきたくないのか、ついていってなんかやるものか、と思うのか、そのへんは自分でも判断つきかねるのだけれど、まさにそう。これまでもこのつれづれにさんざん書いてきましたが、大体の人が好きなお刺身、お寿司、焼肉などは嫌い。(ナマモノ以外は食べられるのだけれど、焼肉はなんだか早く食べなきゃいけない気がして、せわしなくて苦手です)トレンディースポットは混雑してるから嫌い。これは子供時代に静かな田舎町で育ったから人ごみが苦手なんだと思うけど。そして、ここからはちょっと飛躍するのだけれど、有名になりたいと思わない。

 こないだ久々に言われちゃったのです、あるお客様に。「康子ちゃんも紅白歌合戦に出られるように頑張れ」って、真顔で。去年、綾戸智恵さんが出たからかもしれませんし、応援してくださるお気持ちは本当にありがたいです。でも、有名になろう!という気持ちはないし、芸能界を目指してるわけでもありません。そんなことわかってるよ〜、といってくれる人のほうが多いと思うけど、どうもいまだに「わからんちん」がいるようなので今日は書かせて。有名になるってことは組織(プロダクション等)に入って、ということだから、必ずしも自分のやりたいようにできるとは限らないし。嫌になってもすぐにはやめられないし。私は気楽だから、いまの仕事をしてるのに、ちっとも気楽じゃなくなっちゃう。それに、仮にいっとき売れたとしても売れなくなったらお払い箱だろうし。そんなふうに自分を商品のように扱われたくない。人にちやほやするのも苦手だけれど、ちやほやされるのも嫌いだし。あと「有名なお店に出てほしい。トレンディーな六本木や青山で歌ってほしい」というご意見もたまにありますが、これも私には興味ない。自分にとってやりやすい(音響、金銭的条件、集客しやすいかどうかの立地)かどうか、がすべて。仮にいわゆる有名店で、これらの条件を満たすところがあれば、実力を省みず出演希望の旨を申し出るでしょう。が、現在のところ、アリエスがそれらの諸条件を満たすベストなので、ぜひこちらにきていただきたいです。青山はわかりませんが、六本木のお店には何度か出演したことがあるのですが、私のお客様の多くは交通の面で来づらいらしくて。俗に言うハングリー精神がまったくないので、もしかしたらこういうお仕事にはむかないのかもしれませんね。そういうわけで、前も書いたかもしれませんが「この人はいつか有名になるだろうから応援しよう」みたいな気持ちの方がいたら、それは心苦しいので、すぐにお考えを改められるか、または野心あふれる歌手のステージへどうぞ。

 巨大仏の話のつもりが、なんだかまたまた愚痴っぽくなってごめんなさい。でも、こういう「有名になって」みたいなご意見は疲れてしまうのです。それとも世間的には、「音楽活動をしている人は有名になるべき」あるいは「有名になることこそ成功」というのが「主流な価値観」なんでしょうか?だとしたらやっぱり乗り切れないな。有名人って、今の世の中では特に生きづらいと思うけれど。私の理想は、有名ではないけれど、お金と時間はある生活。そしたら全国の巨大仏をのんびり訪ね歩きたいです。

 最後に「有名になろう」としてなるのではなく、何かを一生懸命にした結果として、有名になるのだったら、それは納得できるし理想でしょう。「有名になれば好きなことができる」といって、有名になるための努力をするのはちょっと違うんじやないかな、ってただそれだけが言いたかったんです。巨大仏までだしてきて、仏様に怒られちゃうかな。来週は板橋にある「東京大仏」を観にいくので、仏さま、ワガママをお許しくださ〜い!


大越 康子