恋愛小説は苦手


 今年も後半戦に入りました。蒸し暑い毎日ですが、お元気でしょうか?
6月はメインライブに照準をピタリと合わせられたのはよかったのですが、気が抜けたのかその後、夏風邪でダウン。風邪声のステージにいらした方、申し訳ありませんでした。

 どうも風邪っぽいなあ、と思ったときに寝付けず、恋愛小説などを読みはじめたのがいけなかった。スタンダードジャズには恋愛の歌詞が圧倒的に多いので、血中恋愛濃度の低い私も「そうした小説でも読んで、情熱的世界に浸らなければいけないのでは」という強迫観念にときどき襲われます。そんなときは目についた恋愛小説を買ってくるのですが、今回はジャズの曲名にも似たタイトルにも惹かれて小池真理子・作「虹の彼方」を選んでみました。が、これがいけなかった。

 いえいえ、内容は新聞の連載小説だっただけのことはあり、ぐいぐい読ませるのです。要は、大人の純愛の物語。でも当人たちの気持ちがどんなに純粋であっても、大人であればすでに持っている家族、仕事にも影響を及ぼして、人を傷つけてしまうこともある。読み進むにつれて、自分が不倫をして嘘をつきとおしているような気持ちになり、心底疲れました。(以前、桐野夏生・作「柔らかな頬」を読んだときも同じようなことを書きましたが)ほぼ2日かけて読み終えたときにはぐったり。主人公には新しい恋人ができたのに、私には寒気と喉の痛みが残っただけ。最悪です。もう少し引いて読めたらいいのにな。新聞小説を読むのが好きなので、この単行本を読みながらも、「毎日、どこから始まって、どこで終わっていたのだろう?」などと切れ目を推定したり、最初は気楽に読んでいたのに、ついはまってしまったのか失敗でした。

 新聞連載小説といえば、昨年から読み続けている宮部みゆきさんの「楽園」がもうすぐ終わりです。一年間は長かった!もうじき終わりらしいことはわかるのですが、このミステリーがどうまとまるのか私にはさっぱり見当もつきません。種明かし(解決)が待ち遠しいなあ。と同時に終わってほしくないなあ。というのは、次の連載は渡辺淳一さんの小説らしいから。昔の医療ものだったらいいけれど、最近の恋愛ものは苦手。ぜんぜん読む気がしない。毎日の日課がひとつ減ってしまってつまらないなあ。読む新聞を替えちゃおうかなあ。新聞選びにもイロイロな理由があるものなのです。それと一年の連載はやっぱり長いですね。半年くらいがちょうどいいかな。ところで、新聞の連載小説って、いったいどれくらいの割合で読まれているんでしょうね。ちなみに私の周りでは読んでいる、という人はひとりもいませんが・・・。

 しかし、恋愛小説には懲りましたが、最近また別のお気に入りのシリーズを発見!
それは畠中恵さんの「しゃばけ」シリーズ。しゃばけとは「娑婆気」と書き、俗世間における、名誉・利得などのさまざまな欲望にとらわれる心、のことだそうです。江戸時代が舞台のこの小説は、人情推理帖。廻船問屋の若旦那は体が弱く、寝込んでばかりいる。が、その若旦那を守るべく彼の周囲には妖怪がたくさん。かくして若旦那と妖怪たちが難事件を解決すべく大活躍!といった感じ。もう最高!体は弱いけれど、意思の強い若旦那にはほれぼれするし、妖怪たちもかわいらしい。すっかりとりこです。このシリーズは5作まで出ているらしく、最新作では若旦那が始めて長旅に出るのだとか。まだまだ楽しめそうです。私は現実的なお話よりも、こういう異次元の話のほうが好きなのね、とあらためて思い知ったのでした。そういえば映画も恋愛ものは苦手でSFが好きだしなあ。ちなみにいちばん好きな映画はB級SFの傑作といわれる「ブレードランナー」です。まったくスタンダードジャズとは相容れない気もしますが、じゃあSFに合った音楽のジャンルは何か?ときかれてもそれはそれでわかりません。まあコンピューターデジタルサウンドなのかな?逆に、ジャズに合った映画のジャンルは、恋愛ものだけでなくミステリーなんかもいいのでは?そうそう映画といえば、私のCD次回作は映画音楽集です。現在厳しい(?)レコーディング中。発売は10月の予定ですので、こちらもどうぞよろしくお願いします!


大越 康子