Only One Attraction |
「えーっと?コッチをこ〜回して通して…っと」 ギュッ! 「それから…この通した所をコッチへ回して上げて〜えいっ!」 ギュウウゥゥ〜! 「イッ!?イデデデッ!八戒痛ぇよっ!締めすぎだろコラッ!」 布団で俯せに転がされ、身動きできない程ガチガチに締め上げられている悟浄が、真っ赤な顔で喚いた。 涙目で振り返る悟浄に、八戒はニッコリ微笑み返す。 「そんなこと無いですよ?こうして指1本入る程度の余裕で締め上げた方がゾクゾクして気持ち悦いって、捲簾さん言ってましたもん」 「ケン兄のバカアアアァァァーーーッッ!!」 余計な悪知恵を八戒へ授けた最愛の兄へ、悟浄は思いっきり罵声を浴びせた。 性に関してあまり知識のない八戒は、スポンジ状態で何でもかんでも好奇心旺盛に吸収する。 純情可憐で可愛らしく居て欲しい悟浄としては、八戒に悪魔の囁きを吹き込む兄カップルは全く以て迷惑極まりない。 しかも八戒がこれまた素直に聞いたりするものだから、あの2人が面白がってアレコレ余計な指南をしたがるらしい。 今まで確かに悟浄自身、性生活は自慢できない程乱れまくっていたが、兄や天蓬に比べれば至ってノーマルだったと思い知らされる。 八戒に関しては真摯に極々普通のお付き合いを望んでいる悟浄にとって、あの2人の存在は誤算以外の何物でもない。 ちょっと魂が抜け気味に放心している間も、八戒はアレコレ縄を弄って悟浄を楽しげに括っていた。 「んっしょっと。コレを最後にひっぱって…んんんーっっ!!」 「ぃでっ!ぐあっ…バカッ!ぐるじいいぃ〜〜〜っっ!!」 背中に足を掛けて思いっきり縄を引っ張り上げられ、悟浄は締め上げられる息苦しさにジタバタ暴れる。 「はい、できましたvvv」 「はっ…はぁ…はぁ…っ」 会心の笑みを浮かべて八戒がパンパンと手を叩いた。 悟浄は荒く息を乱して布団へ突っ伏す。 「うーん…僕って結構器用なんですかね。バッチリですよ悟浄っ!」 「ナニがバッチリなんだよぉ…亀甲縛り出来たって自慢にもなんねーよ」 「え?だって天ちゃんは縛りの王道は亀甲縛りで、そこから色々バリエーションを変えて愉しめるって」 「んなのマジで信じるなっ!こんなのでドキドキワクワクするアノ2人はおかしいーのっ!」 「えっ!?僕結構ドキドキしてますけど…」 「………。」 頬を染めた八戒からじっと舐めるような視線で見つめられ、悟浄の頬が思いっきり強張った。 そんな八戒を悟浄は見上げ、違う意味でドキドキ心拍数が急上昇する。 ふいに後ろ手で縛られた手首を、八戒が指先でそっと撫でた。 「縛られて動けない悟浄って…何かすっごくイイですvvv」 チョット待て! ナニがいいんだよっ!! 陶酔しきった声音で呟かれ、悟浄の身体がビクッと竦み上がる。 「着物がはだけて覗く引き締まった身体に食い込んだ縄って…イヤラシイですよねぇ」 な…なななな何か八戒の目がヤバ気なんですけどっ!? 心なしか八戒の息遣いが大きく乱れていた。 瞳は欲情に孕んで濡れ、頬の紅潮が興奮していることを顕している。 全く身動き取れない身体が「さぁ、どうぞv」と、獣スイッチの入った八戒にちょんと据え膳状態。 絶体絶命の大ピンチだ。 「はっ八戒っ!落ち着けっ!な?」 「落ち着けると思ってるんですか?」 「それでも落ち着けっ!こんなのヤダってのっ!」 「僕は大好きです〜」 「わーっ!わーわーっ!!バカッ!捲るな撫でるな持ち上げるなっ…イデェッ!!」 手首から思いっきり腰が浮く程吊り上げられ、悟浄が顔を顰めて苦痛を訴える。 「…ヤダ。悟浄ってば丸見えvvv」 「ーーーーーっっ!?」 すっかり着物の裾がはだけて下半身が剥き出しになっていることに気付いても、悟浄にはどうすることも出来ない。 どうにかならないかと必死に身体を捩るが、返って裾が捲り上がってしまう。 悟浄の背後に正座していた八戒は、真っ赤な顔でプルプル小刻みに震えた。 「悟浄からそんな風に誘われたら…僕…僕っ!」 感極まった八戒の声が上擦る。 裾に気を取られていた悟浄が、はっ!となって後を振り返った。 うわっ! 思わず悟浄は息を飲む。 キラキラと愉しそうに瞳を輝かせた八戒が、両手を胸の前で組んでじっと悟浄のあらぬ所を注視していた。 「………あっ!?」 あからさまに欲情を含んだ熱い視線が、何も着けていない股間に注がれている。 途端に悟浄が全身を真っ赤に染め上げた。 身に着けていたモノを隠された悟浄は、当然下着も穿いていない。 こんなコスプレ衣装に着替えるしか無くって、尚かつ予想外のSMプレイに気を取られ、その事実がスコーンと抜け落ちていた。 当然今の自分は、スッポンポンの無防備な下半身を惜しげもなく八戒の目の前にご披露している訳で。 「わーっ!見るなバカッ!!」 悟浄は慌てて身を捩るが、捲れ上がった着物ごと縛られた状態では隠しようが無い。 どうにか身体を横倒しにして脚を閉じるが、すぐに八戒が手首の縄を吊り上げた。 「ヒッ…いっ…てぇ…っ!」 ギリギリと締め付けられる痛みに身体を浮かせば、どうしたって腰が浮いてしまう。 布団に肩を落として呼吸を荒げる悟浄の腰を、八戒は宥めるように撫でた。 「悟浄…可愛いですよ」 「んな…あるか…っ…もっ…解け…よぉ」 痛みに顔を顰めてしゃくりあげれば、八戒の手が強引に脚を割り開く。 「でも悟浄…気持ち悦いんでしょ?」 「よくねっ…こんなの…ヤダ…って」 「でも、悟浄のココ…勃ってますけど?」 「………え?」 クスクス笑う八戒の手が、前に回って悟浄の性器をキュッと掴んだ。 八戒の掌で肉芯が更に熱く脈打つ。 「ほら、こんなに硬くなって…先っぽもヌルヌルしてますし」 「う…そぉ!?」 悟浄は自分の身体の変化を信じられず、苦しい体勢で下肢を覗き込んだ。 目の前の光景に愕然と目を見開く。 綺麗な指に支えられなくても充分な硬さで屹立していた。 八戒がほんの少し握るだけでも、ビクンと震えて先端が濡れてくるのが分かる。 「ね?気持ち悦いんでしょう?」 「………悦くねーもん」 羞恥で顔を布団へ埋める悟浄を、八戒は愛おしそうに双眸を和らげた。 「アイツが厭だって言うのは最初だけ」 きっちり天蓬の手によって縛り上げられた捲簾が、俯せに転がったままニッと口端を上げる。 土曜日の長閑な午後。 朝っぱらから天蓬の電話で捲簾宅へ呼び出された八戒は、リビングに広げられた見慣れないモノの数々に瞠目した。 所謂大人のオモチャのオンパレード。 知識として知ってはいたが、実際目にするのは初めてだった。 あ、結構可愛いかも。と八戒はウサギ型のローターを手に取り興味津々で眺める。 「八戒は悟浄クンと使ったことありませんよね?」 「無いです…天ちゃん達はこういうのを…その…使ったりするんですか?」 ほんのり頬を赤らめ、八戒がチラチラと恥ずかしそうに全開笑顔の2人を見遣った。 爽やかな陽射しが降り注ぐ休日に全く相応しくない光景。 悟浄は本日昼からバイトがあり、捲簾の息子簾は祖父母の所へ遊びに出かけている。 八戒を教育するには絶交のチャンスだ。 捲簾宅へ泊まりに来ていた天蓬は、その夜ベッドの上で通販カタログを2人一緒に見ていた。 勿論言うまでもなく、淫靡な大人のアイテムがこれでもかと掲載されているカタログだ。 2人でコレを買おう、アレも欲しいなどとチェックをいれていた時、ふと天蓬が何かを思案し始める。 「…どした?やっぱコッチのバイブにする?」 ページをぼんやり眺める天蓬に、捲簾がちょこんと首を傾げた。 「あ、いえ。そうじゃなくって…ちょっと思ったんですけど、八戒達ってこういうモノ使わないのかなぁーって」 「んー?使ってねーんじゃね?八戒ってウブっぽいから、オモチャとか使って愉しむな〜んて思いつかなさそう」 「それは当たってますけど。じゃぁ悟浄クンはどうなんです?」 「悟浄?どうだろうなぁ…自分がオンナに使ったことはあるだろうけど、自分が使われるとなるとすっげ厭がるだろうなぁ」 つくづくといった調子で捲簾が呟くと、天蓬は不思議そうに瞬きする。 「悟浄クンって…意外と純情可憐なんですか?」 「純情…可憐…ぷはっ!」 天蓬の言葉に大ウケして、捲簾がベッドを叩きながら爆笑した。 「アッハッハッ!純情可憐っ!そうかもっ!未だに八戒抱きてぇってぼやいてるしぃ〜」 腹を抱えてしゃくりあげる捲簾に、八戒は苦笑いを浮かべる。 「こう言ったら捲簾の弟さんだからなんですけど…悟浄クンて結構お馬鹿さんですか?」 「そうそうっ!一途一直線の純情バカ!アイツ初めてマジなお付き合いする恋愛って八戒が初めてらしいから、すっげ夢見ちゃってるんだよな〜」 「へぇ…それじゃ純情可憐でも当然ですね。でも、それじゃ倦怠期も早そうじゃありません?」 「…かもな。何?何か企んじゃってる訳?」 愉しそうに微笑む天蓬の顔を覗き込んで、捲簾がワクワクと身を乗り出した。 視線を合わせると、天蓬が意味深に双眸を眇める。 「八戒と悟浄クンの仲が上手くいくことは、少なからず僕らにも関係あることですからね」 悟浄は捲簾の可愛い弟。 八戒は天蓬の従兄で大事な愛息簾の先生。 「…倦怠期対策は早めに越したことねーよな?」 「…でしょう?」 2人はじっと見つめ合うと、同じ企みを瞳に浮かべて口元を緩めた。 「それにしても…こんなに色々あるなんて、全然知りませんでした」 一通りの種類広げられたオモチャをしげしげと眺めて、八戒は溜息を零す。 「まぁ、こういうのを使うのも愛情表現のカタチなんですよ?」 「悟浄は何にも教えてくれないんですよぉ。僕はいっぱい悟浄を気持ち悦くしてあげたいっていつも思ってるんですけど」 「アイツは八戒がこういうの使うとは思ってねーんだろ?案外クロゼットとかに隠して持ってるはずなんだけどな〜」 「そうなんですか?」 きょとんと目を丸くする八戒に、捲簾が自信ありげに微笑む。 「だってお兄ちゃんだから、可愛い弟のことは分かる訳よ」 「捲簾ってば…ホント気持ち悦いコトには貪欲ですからねぇ」 ウットリと囁く天蓬を咎めもせず、捲簾は肩を竦めるだけ。 「悟浄も俺の弟、だから?」 意味ありげに謎掛けすれば、聡い八戒はすぐに気付いた。 「当然悟浄も…ってことですよね?」 「それは俺よりも八戒の方が知ってるだろ?いっつもスル時は厭だとかごねるんじゃね?」 「ええ…そうです」 未だに悟浄から素直に欲しいとか抱いてと言われたことがない八戒は、しみじみ頷く。 「でも、結局悟浄の方が快感に従順で貪欲だったりするんだろ?」 「そうっ!そうなんですよ!それなのに…もぅっ!」 ピッタリ言い当てられた八戒は、興奮気味に床を叩いた。 結局いつも悟浄は八戒を欲しがって受け容れてくれる。 それでも気持ち悦いから仕方ない、という言い訳や誤魔化しをしてくる悟浄に八戒は少し不満を抱いていた。 「それはね?悟浄クンが八戒に夢を見すぎてるせいなんですよ」 「僕に?夢??」 「清廉潔白なお坊っちゃまの八戒は、そんなセックスの卑猥な知識は持って欲しくない」 「何ですかソレ」 子供扱いされた気がして、八戒は不機嫌も露わにムスッとむくれる。 「って、悟浄は思い込みたい訳よ」 「え?どうして…」 「本当のセックスを知らないんだろ、悟浄は」 きっぱりと告げる捲簾に、八戒は驚いて目を丸くした。 自分と出逢う前は不特定多数の女性達と相当遊びまくっていたと、悟浄は八戒へ告白していた。 その悟浄がセックスを知らないなんて考えられない、が。 「だから。愛するヒトと身も心も満たされるセックス、って意味でさ」 「あ…っ」 「八戒が初めてのオトコだからさ〜未だに固定概念に縛られて、自分でもどうなっちゃうか分からねぇほど突き抜ける快感っての知らないんじゃないかって、お兄ちゃんとしては心配なのよ」 「捲簾さん…」 ニッコリと微笑む捲簾を、八戒は愕然として見つめる。 「あ、勘違いすんなよ?八戒とスルのが悦くないってことじゃなくって」 「悟浄クンは未開発だってことですよ」 「天ちゃん…」 「ワクワクしてきませんか?八戒の手で、悟浄クンの身体を八戒じゃなきゃイケないように開発しちゃうんです」 「僕が…悟浄を?」 悟浄が僕のことを欲しがって、与えられる快感に身悶えて。 「…凄く愉しいかもしれないです」 真っ赤な顔で俯く八戒を、天蓬と捲簾は目配せして小さく頷く。 「でも八戒はどうしたらいいか分からないでしょう?そのお手伝いを微力ながらして差し上げようということなんですよ」 「俺だって悟浄には身も心も幸せで満ち足りて居て欲しいし」 「天ちゃん…捲簾さんっ!」 2人の言葉に八戒は感極まってウルウルと瞳を潤ませた。 身体をもじもじと後に下げ、八戒が深々と頭を下げる。 「僕悟浄の為なら何でも頑張りますから!」 「勿論任せて下さい」 「俺が悟浄の悦ぶコト教えてやるよ」 こうして八戒は2人から拘束プレイの手解きを、懇切丁寧に実践付きでマスターした。 手際の良さは2人のお墨付きだ。 いつか悟浄をコレで満足させて見せますからっ!と、常日頃から八戒は密かに意気込んでいたが、チャンス到来。 「あ…八戒ぃ…っ…何か…熱っ」 後ろ手に括られて、割り開かれた股間を八戒に弄られている悟浄の瞳が快感で蕩けてきた。 緩やかすぎる動きに焦れて、悟浄の腰が誘うように八戒の目の前で揺れている。 『アイツが厭だって言うのは最初だけ。結局は八戒にされるのが嬉しいんだよ』 捲簾の言葉が脳裏に浮かんできた。 「八戒…っ…もっと…グチャグチャに弄…ってくれ…っ」 はっきりと欲しがって強請ってくる悟浄に、八戒の理性も真っ白に弾け飛ぶ。 その口元には淫猥な笑みが。 「そんなんじゃ足りません…もっともっと僕を欲しがって下さい」 甘い毒を含んだ声音に、悟浄は身体の芯を疼かせた。 |
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