*****The Future Bride***** |
本日も長閑な天界。 「あ〜〜〜〜退屈だなぁ〜」 光溢れるテラスで、観世音菩薩は双眼鏡片手に耳かきをしている。 三蔵御一行様は旅路を終えて、それぞれの地に戻っていった。 牛魔王蘇生実験を阻止して、人間や妖怪が手を出せない他次元に再度封印したのだ。 強制的に洗脳を施されていた妖怪達も、元の状態に戻った。 しかし、一度失った人間と妖怪相互の信頼を回復するには、今暫く時間が掛かるだろう。 色々な蟠りや思惑があるにせよ、表面上は昔の穏やかな桃源郷に戻りつつあった。 任務を終えたその後の4人と言えば。 三蔵は悟空を伴って、三仏神の命により新たな寺院へと着任していた。 今度の場所は長安の街に比較的近い場所だ。 悟空などは八戒や悟浄に会いに行きやすくなったと、素直に喜んでいる。 三蔵は相変わらずのマイペース。 我が道を行く性格は変わらず、事あるごとに八戒と悟浄を呼び出しては無茶な仕事を押しつけた。 そして。 八戒と悟浄と言えば。 何の疑問も持たずに、旅に出る前と同じ生活に戻っていた。 悟浄は収入稼ぎに賭場通い。 八戒は近所の学習塾で、子供相手に週3日講師の仕事を始めていた。 ただし。 二人の間を流れる無自覚の甘ったるい空気は、同行者が居るという遠慮が無くなった分、以前よりもグレードアップしていた。 ジープなどしょっちゅう胸焼けを起こしては、三蔵達の所へ避難してくるようになる。 そうやって既に1ヶ月が過ぎていた。 「お〜?チビのヤツは、まぁたつまみ食いして金蝉に怒られてやがる。で、こっちはっと…あ?ナニ昼間っから庭でサカッてやがんだ?あのバカップル」 菩薩は双眼鏡を覗き込みながらブツブツと独り言を繰り返す。 「…また下界を覗いておられるんですか?」 傍らまで来た二郎神が思いっきり呆れ返った。 こうして日がな1日、菩薩は下界を覗いていることが多い。 おかげで決裁書類が最近滞っていた。 「だぁ〜って最近ヒマ過ぎんだもんよぉ〜。メンドくせぇから、この際アイツら天界に呼び戻すか?」 「かっ!観世音菩薩!何無茶なことを仰ってるんですか!!」 顔面蒼白になって二郎神が悲鳴を上げる。 「………冗談だよ、じょ〜だん」 つまらなそうに一瞥すると、菩薩はまた双眼鏡を覗き込んだ。 今のは絶対80%ぐらいは本気だったはず、と二郎神は逐一菩薩を見張っていなければと決意を固める。 二郎神がコホンと咳払いをする。 「観世音菩薩、彼らは元気でおられるのですか?」 二郎神とて気に掛けていた。 姿は変われど、かつてはこの天界で彼らとは共に過ごしていたのだ。 それなりに思い出もある。 「あ?元気過ぎるって感じだな。それにしても何か起こんね〜かなぁ…唯の生活見てたってつまんねーし」 菩薩は盛大に溜息を吐きながら、双眼鏡を傍らへと置いた。 「彼らが日々穏やかに過ごせているのなら、それで宜しゅうございましょう?私は今生でこそ彼らには幸せに天寿を全うして貰いたいのです」 「お前ねぇ…それじゃ俺サマがつまんねーだろ?」 「観世音菩薩…」 二郎神は傍若無人な上司の言葉に頭を抱え込んだ。 「それぞれが共に仲良く幸せに暮らしているのなら、それが一番でしょう」 「仲良く…幸せに…あっ!」 突然何かを思いだしたように菩薩が声を上げる。 続いて口元に浮かぶ楽しげな頬笑み。 二郎神の背筋がゾゾッと怖気立った。 こういう表情をする菩薩は、絶対良からぬコトを企んでる。 二郎神は冷や汗を流しながら身構えた。 「俺サマとしたことが〜忘れてたぜ!そうだそうだ、アイツらにご褒美をやらなきゃいけなかったんだよなぁ〜♪」 「かっ…観世音菩薩?」 「さてと、どーっすっかなぁ〜?天蓬と捲簾は例の件でいいとして。ああ、年季で言ったら金蝉とチビの方が先だよなぁ?チビなんか500年待ったんだし」 菩薩の顔が見る見る底意地の悪い笑みで全開になる。 「どう思う?二郎神」 「は?どう…かと申されましても??」 二郎神は話が見えず、しきりに首を捻った。 とは言うものの、ロクでもないコト企んでいるのだけは分かる。 「観世音菩薩…あまりお遊びが過ぎるのは」 「あ?何がだよ。ありがた〜い菩薩サマからの褒美を、頑張ったアイツらに与えてやろうっていうんじゃねーか。なぁ〜にが悪いんだよ」 「あああぁぁ〜」 二郎神の切なる願は、この破天荒すぎる上司に聞き入れて貰えなさそうだ。 「さて?どっちを先にすっかな。ああ、面倒だから一緒にやっか?」 観世音菩薩はニヤニヤと下界を眺める。 その両掌の上に突然ふわっと光の珠が現れた。 「ま、後はアイツら次第だな」 口端をつり上げて頬笑むと、光の珠を2つ、目の前の蓮池へと落とす。 水面に触れた瞬間、珠は目映いばかりの光を放って、吸い込まれるように消えていった。 「…今の珠は何でございますか?」 二郎神は眉を顰めて蓮池を注視する。 「魂核だ、まぁ人間で言うところの卵子だな」 優雅にカップへと口を付けながら、菩薩は平然と言い放った。 二郎神の顔がさーっと真っ青になる。 「らっ…卵子って…まさか!?」 「人間の女が自分の身体で作り出す卵子だと、男のアイツらじゃ流れる可能性があるしな。そこは俺サマ特製の魂核だ。絶対着床間違いなしっ!!100%完全保証だ。後は精子だが…アイツらじゃ全く問題ねーだろ」 「―――――っっ!?」 菩薩の爆弾発言に、二郎神はその場にへたり込んでしまった。 大変なことになってしまう。 しかし、止めようにもすでに魂核は下界の彼らの元へ放たれた後で。 「ふふふふ…楽しみだなぁ、二郎神♪」 観世音菩薩は再び双眼鏡を手に取ると、光の珠の行方を追った。 「―――――あ?」 ふいに何かが落ちてきたような感覚に、悟浄は小さく声を上げる。 何だか腹の辺りが一瞬熱くなった気がした。 「どうかしましたか?悟浄」 ダイニングのテーブルで売り出し品の広告チェックをしていた八戒が、不思議そうに声を掛けてくる。 「んー?何か今…腹に何か落ちてきたような感じがして」 「お腹にですか?」 腹部を見下ろしてもこれといって何ともなっていなかった。 先程感じた熱も今はない。 「多分気のせいかな。第一、家の中にいて天井から何か落ちてくる訳ねーしさ」 悟浄はソファに寝そべったまま、ダイニングに居る八戒へと苦笑した。 「それもそうですね。でも万が一ってコトもありますから、お腹に何か掛けて居た方がいいですよ?」 「んー、そうする」 悟浄は素直に頷くとサニタリーへと行き、大きめのバスタオルを1枚持ってくる。 「さて、それじゃ僕買い物に行ってきますね。悟浄、今日は何時に出かけます?」 「そうだなぁ…今日はヤメとくわ」 「悟浄…やっぱり体調…」 八戒は心配そうに眉を顰めた。 それに苦笑しながら悟浄はヒラヒラと手を振る。 「違うって!別に何ともねーよ。な〜んか眠くってさぁ、今日は家でまったりしたい気分?」 「それならいいんですけど。僕出かけてきても大丈夫ですか?」 ソファの横で屈み込んで、八戒が悟浄を見つめる。 しょーがねーなぁ。 心配性すぎる同居人に、悟浄は笑みを浮かべる。 そうやって八戒に心配されるのは、何だか心地よかった。 手を伸ばして、悟浄は八戒の髪を宥めるように撫でる。 「別に病気じゃねーから心配すんなって。それよりさ、煙草切れちゃったからカートン買ってきて〜ん♪」 「…確かに心配いりませんね」 八戒は立ち上がり様ピシッと悟浄の額を指で弾いた。 「イテッ!デコピンなんかすっかぁ?跡付いたらどーすんだよ!」 「男前が上がっていーんじゃないですか?じゃ、僕出かけてきますからね。もし昼寝するんでしたらちゃんと鍵掛けて下さいよ」 「へーへー、りょ〜かい」 財布を持って玄関に向かう八戒を、悟浄は寝そべったまま見送る。 扉が閉まると、悟浄はホッと身体中の力を抜いた。 先程からじわじわと腹部の熱が上がってきているような感じがする。 決してそれが不快な訳ではないのだが、どうにも経験したことがない奇妙な感覚だった。 「いきなり何だろうな…」 いちいち気にするのは性に合わないので、悟浄はそのまま寝ることにする。 どうせ一眠りして目が覚めればどうってことないだろうと、安直に考えた。 悟浄はクッションに頭を沈め、瞳を閉じる。 それが人生最大の事件に発展しようとは、このときの悟浄は夢にも思わなかった。 八戒はチラッとリビングの時計に目を向ける。 もう昼を過ぎていた。 ここ最近、悟浄の様子がおかしい。 身体が妙に怠いらしく、起き出す時間が日に日に遅くなっていた。 相変わらず賭場へも出かけはするが、12時前には戻ってくる。 以前なら夜中からが稼ぎ時だと悟浄は笑っていたのだが。 不思議に思って八戒が悟浄に問い質すと、悟浄自身も分からないと首を傾げた。 「たださ…な〜んか最近空気が合わないっつーか…」 賭場独特の澱んだ空気が身体に合わないと言う。 それに、味覚も変わってきていた。 以前の悟浄は味の濃い、割と腹持ちのいいコッテリとした食べ物が好物だったのだが、最近では薄味であっさりした食事を好むようになっている。 それに滅多に口にしなかった甘いモノも嬉しそうに食べていた。 八戒が作るお菓子はもちろん、自分でも街へ出かけてアイスだのケーキだのと買ってくる。 今悟浄がハマッて凝っているお気に入りは、柑橘類のシャーベットだ。 新鮮な果物を買ってきて作り置きしておくと、本当に喜んで食べてくれた。 悟浄が喜んでくれるのは嬉しいのだが、逆に八戒にとっては気がかりでならない。 何かの兆候があった訳ではなく、ある日突然悟浄が変わってしまったから。 「…夜眠れなくなるから、そろそろ起こした方がいいですよねぇ」 昼食の用意は出来ていた。 あとはスープを温め直すだけ。 八戒は小さく溜息を吐くと椅子から立ち上がり、悟浄の部屋へと向かった。 遠慮がちに八戒はノックしてから、扉を開ける。 「悟浄?起きてますか…」 ひょいと顔を覗かせると、悟浄はベッドヘッドに凭れてぼんやりとしていた。 八戒に視線を向けるとちょいちょいと手招く。 「どうかしましたか?」 「んー…いいからちょっと来いって」 ベッドサイドに八戒が座ると、すかさず悟浄の両腕が回された。 悟浄は甘えるように八戒の肩口に擦り寄る。 八戒は苦笑を浮かべながら、何度も悟浄の髪を梳いて撫でた。 最近の悟浄は毎日この調子だ。 甘えっぷりも日々エスカレートしている。 「そろそろ起きませんか?昼食も用意しましたしね」 「ん…今日なに?」 「今日はオープンサンドにパスタ入りのミネストローネ、それにフルーツサラダですよ」 「…この前作ってくれたブルーベリーのシャーベット食いたい」 「はいはい、ちゃんと作ってありますから。3時のお茶の時にでも食べましょうね」 悟浄が嬉しそうに破顔しながら身体を少し離す。 『ああっ!悟浄ってば!何て可愛らしいんでしょうっ!!』 心の中で八戒は絶叫しながら悶えまくった。 結局悟浄が甘えるだけ八戒も甘やかすので、エスカレートしているようなものだ。 「僕は先に用意してきますから、悟浄は着替えてから来て下さいね」 八戒が立ち上がろうとすると、咄嗟にシャツの袖口を悟浄が掴む。 「…悟浄?」 振り返ると、悟浄は顔中真っ赤に染めながらそっぽを向いていた。 不思議そうに八戒が首を傾げる。 「悟浄?どうしたんですか??」 「一緒に行く…」 「え?」 八戒が聞き返すと、悟浄は益々頬を紅潮させた。 「俺も一緒に行くから…着替えるの待ってろよ」 恥ずかしそうに悟浄は視線を伏せて呟く。 クラリと八戒は立ち眩みを起こしてベッドへと突っ伏した。 「あ…え?おい、八戒?どうしたんだよ!?」 慌てて悟浄が八戒の身体を揺さぶる。 「悟浄…お願いですから、そんな可愛いらしコト言わないで下さいよ。我慢出来なくなっちゃうじゃないですか〜」 布団に顔を埋めたまま、八戒はクスクスと笑いを漏らす。 途端に悟浄の顔がカッと火照った。 「あーっ!もうっ!!可愛いとかゆってんじゃねーっ!もうさっさと先に行けよバカッ!!」 悟浄が布団に俯せたままの八戒を思いっきりひっぱたいた。 「痛っ!だって『待っててvvv』って可愛くお強請りしてきたのは悟浄でしょう?」 「もういいよっ!」 ふて腐れてそっぽを向く悟浄の背中から、八戒がそっと抱き締める。 一瞬悟浄の身体に緊張で力が入った。 「すみません。別にからかってる訳じゃないんです」 「…知ってるよ」 腰に回った腕に悟浄は自分の手を重ねる。 八戒は嬉しそうに微笑んだ。 「それじゃ、用意してますから。早く来て下さいね」 「ああ…」 悟浄の頬に軽くキスを落とすと、八戒は部屋を出て行った。 見送ってから悟浄はゴロンとベッドへ横になる。 「はぁ…な〜んか疲れた」 最近新調したばかりのベッドはキングサイズだ。 ある日八戒が購入して、有無を言わさずいきなり入れ替えてしまった。 確かに、部屋は名目上それぞれに分かれていたが、殆ど寝るときはどちらかのベッドに一緒に寝ていたので、広くなった分もの凄く快適だ。 誰が見る訳でもないと分かってはいるが、それでも拭いきれない気恥ずかしさもあり、悟浄は必ず八戒より先にベッドへ入るようにしていた。 それもようやっと慣れてくると、今度は広すぎて落ち着かない。 気が付くと、いつも八戒の身体に擦り寄って寝てることが多かった。 その大きなベッドを、大柄な悟浄がゴロゴロと転がっている。 「いい加減起きるか」 よっ、と掛け声をあげながら、悟浄は床へと脚を下ろした。 クロゼットから手前に置いてあったシャツを掴んで羽織る。 ジーンズも八戒が畳んでおいてあった物に脚を通した。 何だか身体が重い感じがする。 それも今日に限ったコトじゃなく、ここのところずっとこんな感じだ。 特別身体を酷使して疲れるようなことなどしていない。 いや、日毎のセックスは絶倫の八戒のおかげで酷使なんてモンじゃないが、それこそ今更で慣らされている。 上手く言えないが、そういった類の疲労じゃないはずだ。 やっぱりどこか身体の調子がおかしいのだろうか? 悟浄は倦怠感で重い身体を動かしてダイニングへと向かった。 「ああ、ようやっと来ましたか。ちょうど用意ができましたよ」 苦笑しながら八戒がサーバーからコーヒーを注いでいる。 悟浄は寝起きの一服とコーヒーで身体も少しは覚醒するかなと、ぼんやり思いながらカップを受け取ろうとした。 ガシャン… 悟浄の手からカップが滑り落ち、大きな音を立てて床に転がる。 「悟浄…?」 突然のことに八戒が驚いて目を見開くと、悟浄が口元を抑えてその場に崩れ落ちた。 真っ青な顔をしてガタガタと身体を震わせている。 「悟浄?どうしたんですか!?」 慌てて八戒が駆け寄って悟浄の肩へ手を掛けると、その手を振り払うように悟浄が駆け出した。 「悟浄!?」 尋常でないその様子に、八戒もすぐに追いかける。 悟浄は洗面台に縋り付きながら顔を突っ込んだ。 水を思いっきり流して、苦しそうに咳き込みながら嘔吐を繰り返す。 追いついた八戒が悟浄の背中を繰り返しさすって宥めた。 暫くすると漸く落ち着いたのか、悟浄が大きく息を吐く。 まだ震えの止まらない指を伸ばして、蛇口を捻り水を止めた。 そのままグッタリと洗面所に懐いている。 「はぁ…何なんだよ一体ぃ〜」 情けない声を漏らしつつ、気怠そうに後ろを振り返った。 「…悟浄〜〜〜〜〜っっvvv」 背後には満面の笑みを浮かべた八戒が。 気のせいなんかではなく、瞳までキラキラと輝かせていた。 その表情を見て悟浄はげんなりと脱力する。 「あのな…八戒。分かってると思うけど、妊娠じゃねーからなっ!」 「え?どうしてですか??」 本気で分からないと言う表情で、八戒は首を傾げた。 ますます眉を顰めて悟浄はズルズルと床にへたり込む。 「だ・か・らっ!男が妊娠する訳ねーだろーがっ!昔てめぇが勝手に大騒ぎしたときだって違ったろ?今回のも風邪だ風邪!!」 「そんなのっ!前回はそうだったって言うだけでしょ?今回は違うかも知れないじゃないですか〜」 八戒は納得出来ないのか、プクッと頬を膨らましながら悟浄を睨んだ。 常識が通用しない八戒に、悟浄は頭を抱えてしまう。 どう言や納得すんだよぉ〜、このバカは! 悟浄は本気で困り果てた。 この先八戒と同棲する限り、ちょっとでも悟浄が体調を崩せば大騒ぎするに決まってる。 こう、勘違いを改めさせ、あり得ない妄想を諦めさせるいい方法は無いものかと、悟浄は思案した。 一発で決定打を出さなければ、絶対コイツは納得しないし。 あ、そうだ。 「そんなに言うなら病院行けば直ぐ分かるだろ?」 「もちろんですよ。どっちみち体調が悪いんですから、ちゃんとお医者さんに診て頂かないと」 「ああ、近所の医者じゃダメだ」 「え?どうしてですか??」 八戒は不思議そうに瞬きを繰り返す。 「そこいらの人間専門の医者に診せたって、正確な診断は出せねーだろ?前に三蔵が言ってた三仏神直属の医者に診てもらう」 そして、八戒に最後通告を突き付けて貰おうと悟浄は考えた。 悟浄の思惑を知らない八戒は素直に頷く。 「そうですね。その方が確かに安心かも知れません…じゃぁ先に三蔵へ電話でお願いして、アポ取って頂きましょう。でも…それまで我慢出来ますか?」 心配そうに八戒は悟浄の顔を覗き込んだ。 「寝てりゃ平気だって…とりあえずさ、ソファまで連れてってくんねー?」 苦笑しながら悟浄が八戒へと腕を伸ばす。 悟浄を抱き上げるとリビングへ向かい、八戒は悟浄を静かにソファへと下ろした。 「水分は取った方がいいですから、水持ってきますね。僕病院に行く準備しますので、それまで眠っていて構いませんよ」 「ん…悪ぃ」 悟浄は大人しく瞼を閉じる。 安心させるように悟浄の頭を優しく撫でると、八戒はキッチンへ水を取りに立ち上がった。 |
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