Glamourous Life ’

8月5日、結婚記念日。

八戒は午前中に洗濯と買い物を済ませ、3時には夕食の下拵えも終わらせた。
それもこれも、これからの甘美な時間を誰にも邪魔されずに過ごしたいが為である。
生憎とここには八戒の欲望暴走列車を止める者は、誰一人としていなかった。
仮にいたとしても、八戒から放たれる殺人ビームで即死は免れないが。

一方、そんな八戒の妻(笑)悟浄と言えば。

早朝に帰宅後、相変わらず墜落睡眠に突入して未だベッドで就寝中。
身動ぎひとつせずに、スヤスヤと気持ちよさげにお休みしていた。
起きていたならきっと、八戒から放たれる異様な空気に怯えて逃走を図ったかも知れない。
つくづく不幸…いやいや八戒に愛され、なんて幸せな星の元に生まれたのだろうと、悟浄は涙ながらに後悔…じゃなく、歓喜しただろう。

あくまでも妄想絶好調八戒の言い分だ。

さて、家事の一切を済ませた八戒が、何やら荷物を抱えて寝室へと忍び込んできた。
ベッド脇にそっと荷物を下ろすと、寝入っている悟浄の顔を覗き込む。
「…よく寝ていますねぇ、フフフフ」
邪悪な微笑みを浮かべながら、八戒は悟浄の頬をムニッと引っ張った。
それでも悟浄はピクリとも動かない。
「これなら問題ないかな…さてと」
何の反応も示さない悟浄に安堵の溜息を零しつつ、八戒は傍らに腰を下ろした。
持ってきた箱は、先日三蔵より贈られた結婚記念日のお祝品…だけでは無い。
一緒に持ち込んだ別の箱を嬉々として開けながら、楽しげに口端で頬笑む。
あまりにも上機嫌すぎて鼻歌でも歌いそうな雰囲気だ。
箱だけ開けるとそれは横に避け、三蔵から贈られたプレゼントの方を確認する。
「三蔵ってば…なかなか隅に置けないですねぇ。悟空にもこんなもの着せてるんでしょうか?」
八戒は箱から中身を手に取った。
「それにしても…結構こういうのって高いんですよねぇ。シルクのスケスケベビードール♪随分と可愛らしくフリルが沢山ついて…色がピンクなのがポイントですよね♪黒でお色気全開ってのもいいんですけど。悟浄は何もしなくても色っぽいので、返ってこういうモノの方がオトコとしてはグッときますよね〜あははは」

そう。
三蔵が観音経由でプレゼントしたのは、目眩く官能のひとときをプレゼント…な、セクシーナイティセットだった。
しかもフルセット。

入っていたのはピンクのシルクオーガンジーで出来た、フリルも愛らしいスケスケベビードール。
それとお揃いの色で統一された下着一式。
シルクの総レースTバックにガーターベルト&ストッキング。
何故かシルクサテンのリボンまで一巻き添えてあった。
そして、ふわふわタオル地で出来た、ピンクのウサギさんぬいぐるみまでもがセットになっている。
正常な精神の持ち主なら、オトコ相手に贈られて喜ぶ訳がない。
が、八戒には特殊なスイッチが入っていた。
中を開けた途端に妄想を掻き立てられ、思わず鼻血を垂らしそうになったぐらいだ。
この場合、間違っても自分が着るのではなく、あくまでも眼の中にグイグイ押し込んでも痛くない!いっそのこと、丸ごとバクッと食べてしまいたいほど愛している悟浄に着せようと企んでいる。
八戒の妄想も股間も大きく膨らんでいた。

「さてと。準備をしましょうかね〜」

八戒は立ち上がると、悟浄の上から夏掛けを一気に捲り上げる。
足許に畳んで置くと、横を向いて寝ている悟浄をゴロンと仰向けに返した。
後は手慣れたもので、あっという間に悟浄を全裸にひんむいてしまう。
それでも熟睡中の悟浄は、不幸中の幸いで目を覚まさなかった。
とりあえず八戒は、悟浄にもくもくとベビードールを着せていく。
「えーっと…コレを穿かせて…金具を付けてっと」
一式着せ終えると、ふーっと大きく溜息を吐いた。
「…悟浄ってば、何を着ても恐いぐらいに似合ってしまいますね〜vvv」
八戒の頭のネジは弛みきっている。
ベッドには男前ナイスバディーの、八戒曰く壮絶に可愛らしい悟浄のベビードール姿が出来上がっていた。
しばしじっくりと観察しながら、八戒は小首を傾げる。
「う〜ん…やっぱりスネ毛はこの姿では興ざめしますかね?剃っちゃいましょう♪」
八戒は上機嫌でバスルームからシェイバーを持ってきた。
一旦穿かせたストッキングをもう一度脱がすと、シェービングフォームを塗りつける。
静かな部屋に八戒の鼻歌と、ジョリ…ジョリっとカミソリが毛を剃っていく音だけが響いた。
タオルで脚を拭うと、八戒はあらゆる角度から観察する。
「よし、完璧ですね………ん?」
ふと、その視線は悟浄の脇へと逸れる。
ソコにはオトコならあって当然の脇毛が。
「ついでだからココも剃っちゃいましょうか♪」
腕をそっと持ち上げながら脚と同様に、八戒はツルツルに脇の下を剃り上げてしまう。
そんな状態になっても、未だ悟浄は目覚めないでいた。
悟浄の両腕をびろーんと広げて持ち上げ、剃り残しがないかどうか確認する。
「よしよし♪あっと…肝心な所を忘れてましたね」
寝ている間に生えてきている髭も、丁寧に剃っていった。
シェーバーを洗面器に入れると、八戒は立ち上がって真上から悟浄を見下ろす。
「うーん…また一段と可愛らしくなっちゃいましたねvvv」
八戒は出来上がりがいたく気に入ったようだ。
しかし。

「…アソコの毛はどうしましょうかねぇ」

仰向け大の字に転がる悟浄の股間はシッカリ毛に覆われている。
大人なら当然だ。
八戒は悟浄の股間をじーっと眺めながら首を傾げた。
「どうせなら全部剃っちゃった方がいいんでしょうけど。それも何だかあざとい感じですよねぇ。可愛らしい姿に、ココだけはオトナvvvっていうシチュエーションの方が僕的にはクルっていうか…」
思いっきり真剣な顔をしながら、悩んでいることは下品極まりない。
しかし、八戒には重要なことだ。
暫く考え込むと、大きく頷く。
「やっぱり、アソコの毛はそのままにしておきましょう♪それでも、はみ出したままではいけませんね」
さすがに下着幅3cmでは毛だって収まりが悪かった。
それに悟浄ご自慢の息子サンも頭が『こんにちは』と横からはみ出している。
「とりあえず、はみ出している毛だけでも剃りましょうね」
またもやあっさり決めると、ジョリジョリ毛を刈っていく。
左右上下を確認して、八戒はシェーバーを置いた。
「で、この悟浄のモノをきちんと入れて…と」
レースの布を持ち上げて、八戒は収まりいい角度に悟浄の分身を詰め直す。
「っ…ん…?」
さすがに敏感な部分を捏ね回されているせいか、悟浄が僅かに身動いだ。
まだ準備が終わっていないところで起きられては大変と、八戒は手を離してじっと様子を伺う。
すぐに悟浄は深い睡眠の淵に落ちていったようだ。
規則正しい寝息が聞こえだす。
ほっと胸を撫で下ろして、八戒はそっと悟浄の股間に指を伸ばした。
「…よしっと。完璧ですねvvv」
ニッコリ会心の笑みを浮かべると、先程脱がせたストッキングをまた穿かせ直す。
八戒は次に箱からリボンを取り出した。
「これは…結構長さあるから、切り分けて悟浄の髪に結びましょうか」
ハサミを取り出すと、一定の長さにリボンをチョキチョキと切り分ける。
10本ほど作ると、それを持って枕元の方へと移動した。
八戒は悟浄の髪を少し掬い上げると、器用にリボンを結んでいく。
同じ作業を繰り返して、悟浄の髪左右に5個ずつリボンを結びつけた。

「かっ…可愛いですっ!悟浄vvv」

深紅の髪にピンクのリボンが妙に似合っている。
八戒は鼻をティッシュで押さえながら、最後に箱からピンクのウサギを取り出した。
それを悟浄の肩辺りにそっと置く。
右側からゆっくり肩を押し上げると、惰性で悟浄はコロンと横向きになった。
「ん…っ」
自然と寝やすい体勢に動くと、肌触りがいいのかウサギをギュッと胸に抱き締める。
「――――――っっ!!!」
八戒は顔を真っ赤に染めて無言の絶叫を上げた。
『かっかかかかか可愛すぎますっ!ごじょーっっっvvv』
グッと興奮で震える拳を握り締めて、股間を膨らませる主夫八戒。
誰の目から見ても変態だった。
しかし、当人はそんなこと知ったことじゃない。
鼻に丸めたティッシュを詰め込んで、ジーンズのポケットからデジカメを取り出した。
「も〜フォトジェニックですねぇ、悟浄はvvv」
ほぅっと切ない溜息を零しながら、撮影映像に釘付けだ。
あっという間に120カットもシャッターを切ってしまう。
「これは後でおっきく引き延ばして印刷しましょうね〜♪さてと」
キラリと八戒の瞳が不気味に光った。
何か良からぬコトを考えている証拠だ。
いそいそとベッド脇に戻ると、持ってきた箱の中から今度はハンディカムを取り出す。
バッテリーも充電オッケー。
八戒はビデオ片手に、そっとベッドへ乗り上がった。
キシッとベッドが小さく軋む。
悟浄の脚を挟んで膝立ちすると、真上からファインダー越しに見下ろした。
「上から下までなめて〜っと。で、戻って顔のズーム〜♪はぁ…やっぱり僕の奥さんは可愛いですねぇ」
今にも八戒の股間は暴発寸前。
カメラを片手に指を伸ばすと、透けたベビードールをそっと捲った。
「くうっ!乳首も可愛らしいったらっ!あああぁぁ〜弄りたい舐めたいっ!!」
言いながら、ちゃっかり指で突いている。
「ん…んぅ?」
指先で引っ張ったり捏ねたりグリグリと弄っていると、悟浄が呻きながら眉を顰めた。
捲り上げたベビードールから赤く尖った突起が、八戒に向かって自己主張し始める。
「ああ…悟浄ってば、こんなに乳首を硬くして。僕に舐めて欲しいんですよねっ!待ってて下さい!すぐに可愛がって差し上げますからね〜vvv」
ウキウキしながら八戒は顔を伏せると、カメラは手放さずに悟浄の乳首をネットリと舐め上げた。
無意識ながらも悟浄はピクリと身体を蠢かす。
悟浄の身体に触れたことでプッツリと理性が切れた八戒は、執拗に乳首への愛撫を繰り返した。
舌先でつんと尖った乳首を下から何度も舐め上げ、口に含んで吸い上げる。
「んっ…ぁ…」
次第に呼吸を乱して、悟浄の身体がもぞもぞと身動いだ。
八戒はカメラを横に置くと、更に愛撫を深めていく。
指と舌をフルに使って、目覚めない悟浄へ熱心に奉仕した。
乳首を甘噛みしながら強く吸い上げると、悟浄の身体が大きく跳ね上がる。

「んぁっ!あ…れ…?」

うっすらと悟浄の瞳が開いた。
それでも寝起きで状況が判断できないらしく、ぼんやりと蠢く八戒のつむじを見下ろしている。
身体を辿ってゆっくりと伝い降りる掌が、下肢に届くと突然悟浄は覚醒した。
「えっ?なっなななな何だ??何やってんだよっ!八戒っっ!?」
慌てて胸に吸い付く八戒の髪を掴む。
「あ、悟浄お目覚めですか〜vvv」
「お目覚めって…ナニ人の寝込み襲ってんだよっ!」
悟浄は真っ赤になって八戒を睨め付けた。
「だって…僕寂しかったんです。最近悟浄ってば忙しくて構ってくれないから」
「そりゃ…悪かったけど。でもそれならこんな真似しなくたって、言ってくれれば…」
突然、悟浄が言葉尻を詰まらせる。
何度も瞳をぱちくりと瞬かせながら、じーっと自分の姿を足先から観察した。
いったん目を硬く瞑りながら激しく首を左右に振り、決心を固めて再度自分の姿を確認する。

「なっ…何だこの格好はああああぁぁぁっっ!!!」

もの凄い絶叫が寝室でこだました。
「あ、可愛いでしょ、コレ♪」
八戒はニッコリと上機嫌で頬笑む。
「どこが可愛いんだっ!つーかどっからこんなモン持ってきたんだよっ!?」
「コレですか?三蔵達から僕らの結婚記念日お祝いを頂きましたvvv」
「…結婚記念日?」
「まさか…悟浄、忘れたんじゃないでしょうね?」
八戒の瞳が凶暴な光を湛えて眇められた。
慌てて悟浄が首を振る。
「いやっ!覚えてるって!!8月5日だろ…って、今日じゃんっ!!」
「やっぱり覚えて無いじゃないですか…」
「日にちは覚えてるだろっ!だからって、何でアイツらがこんなモン俺に贈り付けてくるんだよっ!!」
「悟浄に…というか僕ら二人にですけど?」
「…お互い着ろって?」
「違いますよ。悟浄にコレ着せれば必然的に僕は大喜び。悟浄も可愛らしくなれて、二人は愛を再確認。まさに結婚記念日にふさわしい贈り物じゃないですかっ!」
「お前はバカかーーーっっ!!」
悟浄は沸騰する勢いで全身紅潮させると、八戒の頭を思いっきり殴りつけた。
「痛っ!何でですかぁ〜こんなに似合って可愛いのに〜」
「可愛いことあるかっ!気色悪いわ、ボケッ!!」
「悟浄…感覚がおかしいんじゃないですか?」
「お前こそ眼科へ行けーっっ!!」
怒鳴り散らしながら、悟浄はバンバンとベッドを叩く。

それにしても。

いつの間に着替えさせられたんだろう。
何で気づかないんだよ、俺ってば。

悟浄は情けなさのあまりガックリと項垂れる。
よくよく見てみれば、脚なんかスネ毛まで剃られてるし…って、まさか!?
慌てて悟浄は自分の両脇を上げた。
「…はぁ〜っかいいいいぃぃ〜っっ!!」
怒りのあまり涙目になりながら、悟浄が唸り声を上げる。
脚はおろか脇までもがツルツルのピカピカ、女性のようにされてしまっていた。
「…だって、折角ベビードールが可愛いのに、毛がはみ出てたら興ざめじゃないですか」
「根本的に俺に着せるなっ!こんなんじゃタンクトップやショートパンツで外出られねーじゃんかよぉ〜」
「Tシャツとジーンズで我慢してくださいvvv」
「少しは反省しろっ!!」
「…そんなに可愛くないことばっかり言うと、アソコも剃っちゃいますよ〜」
「ざけんなーっっ!!」
悟浄は焦りながら股間を手で隠す。
しかし。
何だか手の感触がいつもと違うことに気づいた。
悟浄の額に冷たい汗が伝い落ちる。
そーっと手を外して、自分の股間を覗き込んだ。
「なっ!?」
悲鳴が喉で絡まる。
「どうかしました?」
八戒は不思議そうに悟浄の様子を伺った。
「何か…毛が…縦長なんすけど…八戒さん」
「だって、下着から毛がボーボーはみ出てたらカワイくないでしょ?」
「だから…こんなもん穿かせるなって…ううう」
あまりの情けなさに悟浄は涙に噎ぶ。
ちっちゃなレーススケスケのパンツに、無理矢理押し込められた息子さんが、あまりにも哀れだった。
「でも肌触りは気持ちいいでしょ?」
「まぁ…確かにいいけど…これってシルクだろ?」
「結構こういうのって高いんですよね〜」
ニコニコと頬笑む八戒に、悟浄は大きな溜息を零した。
オンナがこんなの着てたら、それこそイイカンジなんだろうけど…何で俺なんだか。
しみじみと悟浄は我が身の不運を呪う。
脱力しつつ、部屋脇に置かれた姿見に映る自分の姿を見つけ、さらに疲れてしまった。
どう見てもお笑いだろうに。
この姿のどこに興奮するんだか。
八戒の嗜好だけは未だに分からん。
それこそ八戒が着た方がまだ見れると思うのだが。
…いや、それもやっぱり嫌だ。
所詮ごついオトコの身体に纏って似合うモノではない。
「なぁ…もういいだろ?コレ脱いでも」
「何言ってんですかっ!!これからが本番じゃないですかっ!!」
もの凄い形相で八戒が突進してきた。
悟浄はビクッと怯えながら、ベッドの端まで慌てて後ずさる。
「ほっ…本番って…なに?」

訊きたくないけど。
本当はすっげぇ訊きたくないんだけどもっ!

「このままセックスしましょvvv」
「やっぱりいいいぃぃっっ!!!」

慌てて逃げようと腰を浮かせると、すかさず八戒が悟浄をベッドに押さえ込んだ。
「やめっ!こんなのやだ〜〜〜っっ!!」
「恥ずかしがらなくってもいいですよ…そんな悟浄も初々しくって堪らないですねぇ」

だっ…ダメだっ!眼がっ!八戒の眼がコワイぃぃぃっっ!!

それでも悟浄はジタバタと抵抗を試みる。
「ふふ…何だか悟浄の初めての時を思い出して、ますます燃えますね〜♪」
「そんなの思い出してギンギンに勃起してんじゃねーっっ!!」
グイグイと八戒の股間を押しつけられ、悟浄は顔面蒼白だ。

なっ何かこのまま無理矢理挿れられそうでヤダああぁぁぁっっ!!

心の中でひたすら号泣する。
これから暴走した八戒にナニをされるのか分からない恐怖心で、悟浄は心底震え上がった。

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