Valhalla Egg |
「第2小隊っ!左の洞窟に逃げ込みましたよっ!ロケットランチャーとっととブチ込みなさいっ!第3小隊は援護っ!第4第5小隊っ!背後に妖獣が迫っていますっ!油断しないで回り込みなさいっ!!」 本日のお仕事は山岳地帯。 崖の上から司令官の天蓬元帥は拡声器片手に激を飛ばしていた。 今回の捕縛対象は中型のカエルさんもどき。 もどき、とは。 一見見た目はカエルなのだが、コレが何と二足歩行をする。 しかし身体能力はカエル並みで、とにかくジャンプ力が半端じゃなかった。 高々と飛んで逃げられると、捕縛用の網を仕込んだ弾丸も麻酔弾も届かない。 あまりにもすばしっこい逃げ足で、討伐部隊は捉えるのに四苦八苦していた。 かれこれ下界へ下りてから1ヶ月経つにも拘わらず、未だ妖獣の半数も封印していない。 事前の現地調査では生態域はさほど広くなかったが、その生息実数を確実に見誤っていた。 今下界は春先。 カエルさん妖獣は、カエルらしく地下に潜って冬眠していたのだ。 それ以外にも捕縛するのに手を焼いていることもある。 「ギャアアアァァッ!!」 「うわわっ!?」 「ソコーッッ!背後に気をつけなさいっ!ケロッピの粘液浴びたら、おチンチン消えちゃうかもしれませんよっ!!」 「御意っ!自分はオトコの子がいいので気をつけまーっすっ!!」 天蓬からの怒鳴り声に部下達は戯けて答えるが、顔色は皆真っ青だ。 それもそのはず。 今回のカエル妖獣は身の危険を感じると、一様に口から真っ黄色な粘液を吐き出すのだ。 ただ、その粘液自体に生死が係わるような毒性は無い。 毒性は無いが質が悪かった。 一旦粘液を浴びたりして万が一体内へ取り込んでしまうと、ホルモンバランスに異常を来す恐れがある。 雌ガエルの粘液を浴びれば女性ホルモンが異常分泌するし、雄ガエルはその逆。 しかもカエル妖獣は1匹の雄に対して数十匹の雌とハーレムを形成している。 圧倒的に雌ガエルが多いのだ。 必然的にむさ苦しいオトコばかりの討伐部隊では、女性ホルモンが異常分泌され、その性別さえ変貌させてしまう可能性が多大。 事前の生態サンプルで実験をした結果、80%の確率で生殖器に変化異常が見られた。 オトコとしては由々しき事態。 いきなり生まれ育った性別が変わってしまうなんて冗談じゃない。 百戦錬磨の天蓬&捲簾大隊も、それはもう必要以上に慎重な捕縛作業しなくてはならなかった。 「先頭!第1小隊っ!ちょっと捲簾っ!近付きすぎですっ!第2小隊が追いつくまで待ちなさいっ!!」 「だぁ〜いじょーぶっ!おらっ!全員麻酔弾砲撃用意っ!」 捲簾率いる第1小隊が銃砲を構える背後へ、岩場の上から黒い影が過ぎる。 「捲簾っ!後ぉーーーっっ!?」 「チッ…散れっ!!」 捲簾達の上空から、1匹の大ガエルが突然飛びかかってきた。 側にいた部下を蹴倒しながら、捲簾が携えていた刀身を素早く抜いて閃かす。 「グギャアアアァァッッ!!」 「うわっ!?」 切りつけられた大ガエルが断末魔の叫びを発し、捲簾の上へと落ちてきた。 口から噴き出した泡状の粘液を捲簾は避けきれずに浴びてしまう。 「っ痛…」 咄嗟に顔を覆ったが間に合わず、顔に負っていた傷口に粘液が落ちて滲みていく。 「捲簾っ!?」 見晴らしのいい崖上から指示していた天蓬は、緊急事態に慌てて下を覗き込んだ。 すると。 「元帥っ!後にっ!?」 「ーーーっっ!?」 いつの間にか崖の背後へ迫っていた数匹のカエルが、天蓬へ向かって飛びかかる。 天蓬は振り向き様に麻酔銃を構え、迷いもなくカエル達へ砲弾を撃ち込んだ。 「後方、気をつけて下さいね。コレは早く封印を」 「御意っ!」 部下達を叱咤してから捲簾の様子を見ようと、天蓬が背中を向けた時。 「元帥っ!!」 気絶する寸前だった1匹のカエルが、天蓬に向かって多量の粘液を吐きだした。 素早く腕で打ち払うが、左肩から腕までベットリと粘液を浴びてしまう。 その途端、チリッと焼け付くような痛みが指先に走った。 「………っ!?」 気付かない内に指先に傷が出来ていたらしい。 傷口がカエルの粘液に焼かれてしまった。 控えていた部下達が慌てて蒸留水を持って駆け寄る。 肌の出ている首筋から指先へ付いた粘液を急いで蒸留水で清めた。 天蓬は昏倒しているカエルへ近付くと、爪先で身体をひっくり返す。 「…雄だったようですね」 カエルの性別を確認して、天蓬は詰めていた息を小さく吐きだした。 すぐに踵を返すと、天蓬は崖下を覗き込む。 下では部下達総出で捲簾の身体へドバドバと蒸留水を掛け合っていた。 天蓬は拡声器を持ち直して崖下へ叫ぶ。 「カエルはっ!性別をすぐ確認しなさいっ!」 「元帥…雌ですっ!」 「なんで…すって!?」 頭からカエルの粘液を浴びてしまった捲簾は、部下達が掛けた水を拭って頭を振った。 「捲簾っ!身体に異常はっ!?」 「あー…とりあえず…今はなんもねぇ…ちゃんとオトコの子〜かな?」 捲簾はゴソゴソと軍服の下へ手を差し込み、自分の股間を確認する。 暢気な捲簾の返事に、天蓬はホッと額の汗を拭った。 ホルモン異常を来す粘液を取り込んだとしても、実際実験で変化したのは80% 全てでは無い。 「全く…コレに懲りたら、キッチリ僕の指示を聞いて下さいねっ!いいですかっ!」 「御意ぃ〜。元帥閣下ってば責任取ってお嫁に貰ってくんねーのぉ?」 「安心して下さい。僕は誠実なオトコですから、捲簾が可愛らしいオンナの子になってもちゃんと処女は貰って上げます」 「いやんっ!元帥ってば俺の身体だけが目当てなのね〜っっ!!」 シクシクわざとらしく泣き崩れる上司を、部下達が唖然と口を開けたまま眺めた。 「何言ってるんですか?その時はちゃんとお嫁に貰って上げますから、遠慮無くケロッピと戦いなさい」 「ハネムーンは下界1周旅行にしてね〜んvvv」 「…戯れ言はもう充分です。ホラッ!さっさと臨戦態勢に着きなさい!まだまだケロッピはいっぱい居ますからねっ!」 軽口を叩く捲簾へ内心安堵しながら、天蓬は額に怒りの青筋を立てて怒鳴り散らす。 捲簾は天を見上げながら、不敵な笑みを浮かべて返した。 「オラオラッ!おめぇら抜かるんじゃねーぞっ!」 「了解です大将っ!!」 後方部隊が追い込んできたカエル達を待ち構えるべく、捲簾は麻酔弾を装填して銃身を高々と上げた。 妖獣討伐の任務を終えて天界へ帰還早々、天蓬と捲簾は総司令官命令で医局へ放り込まれた。 今回の任務で直接妖獣の粘液を浴びたのは2人のみ。 身体に変調は見られないが、念の為のメディカルチェックを受けた。 「だーかーらー。何ともねーっての。なぁ?」 「…素っ裸で偉そうに同意を求められても」 いちおう薄い検査服を身に着けている天蓬と違い、捲簾は堂々と全裸でふんぞり返っている。 検査は問診に血液検査と行い、続いて。 医局の道士が二人へカップを差し出した。 「こちらに精液サンプルを取ってきて下さい」 「あー?何でよ?」 「捲簾分かってるんですか?今回の妖獣の生態…」 「ホルモンバランス崩すっつーんだろ?」 「ですから、精液サンプルを検査すれば陽性か陰性かハッキリ判明するんです」 「陽性だったらどーすんの?つか俺のご立派な息子サンは相変わらずヤンチャ盛りだけどー?」 エッヘンと全裸で偉そうに股間を突き出す捲簾に、道士も天蓬も呆れ返る。 「陽性なら後から変調が出るかもしれません。そうなる前に分かれば粘液サンプルを分析して中和剤を打てば最悪の事態にはならないでしょう?」 「な…何?最悪の事態って」 捲簾が息を飲んで天蓬を見下ろすと、眩いばかりのニッコリ笑顔。 「ちゃーんと責任取ってお嫁さんに貰って上げますってば」 「…俺の夢はお婿さんだから遠慮しとく」 「残念ですねぇ〜」 厭そうに顔を顰める捲簾に、天蓬はわざとらしく肩を竦めた。 「とにかく、こちらへ精液サンプル取ってきて下さい」 道士に手渡された小さなカップを、捲簾がマジマジと見つめる。 「俺のコレじゃ入りきんねーぞ?」 「全部はいらないですっ!」 「ハッハッハッ!遠慮すんなー?俺サマの生きの良い精液なんかすっげ貴重で滅多に観察出来ねーぞぉ?」 「とっとと行きますよっ!」 パチッ!と天蓬に尻を叩かれ、捲簾は豪快に笑いながら隣室へ向かった。 パタン。 「かったりぃな〜。精液取らせんなら、綺麗なお姉ちゃん用意しとけっての」 簡易ベッドへ勢いよく飛び乗った捲簾は唇を尖らせて不平を零す。 ヤル気無さそうに立てた膝へ肘を載せ、すっかりふて腐れている捲簾の顔を天蓬が覗き込んできた。 「おや?この僕じゃ役不足とでも?」 意味深に笑みを浮かべる天蓬を捲簾が上目遣いに見つめる。 「…さすがにココじゃ不味いんじゃねーの?」 「捲簾が可愛い声を出さなければ平気でしょう?」 「うぅ〜ん?ちょーっとばかし自信ねーかも?何せ1ヶ月の禁欲明けだし、な」 捲簾は可笑しそうに喉で笑った。 大抵の妖獣は昼間か夜間どちらかに活動する。 しかし今回のカエルに関しての行動時間は、規格外に昼夜問わず活発で気を抜くことが出来なかった。 しかも移動範囲も大きい。 交代制で仮眠は取れても、さすがに性的欲求まで気を回す暇はなかった。 せいぜい互いの身体を撫で回す程度。 1度ヤッてしまえば箍が弛んで際限が無くなる。 極限状態で発情してしまうとそればかりが頭を占めそうで。 任務に対して僅かでも隙が出来るかも知れない。 司令官である天蓬と実働部隊を率いる捲簾がそんな気も漫ろでは、任務遂行の弊害にさえなりうる。 手を伸せば抱き寄せられる距離に居ながらも、二人は悶々と我慢を強いられた。 天蓬が捲簾の隣へ腰掛ける。 「とりあえず、お楽しみは解放されてからゆっくりと…ですかね?」 「だな…こんなトコで犯んのもたまにはスリルあっていーけど、今はじっくりお前のコレ喰いてぇし?」 そう言うと捲簾は裾を割って天蓬の股間へと手を伸した。 確かめるように握り締めると、芯を持って硬く形を変える。 「お前襲われたの雄のケロッピだって?さぞかし野郎ホルモン増殖しまくって、ギンギンになんじゃねーの?」 「…それは後でたっぷりと確かめればいいでしょう?」 性急に天蓬の肉芯を扱き上げると、溢れた先奔りでヌルヌルになった。 小刻みな痙攣を繰り返しどんどん大きく膨張して、掌に熱と鼓動が伝わる。 天蓬は口端に笑みを浮かべ、捲簾の剥き出しの股間へ同じように手を伸した。 「ふ…っ」 「触る前からこんなに硬くしてちゃ、問題無さそうですねぇ」 「うっせ…よ」 天蓬の性器を弄っていて捲簾も次第に興奮してたらしい。 肉芯は筋が張る程屹立して、先端が既に濡れていた。 「雌のケロッピに襲われたっていうから、ちょっと心配だったんですけど?」 「ん…っ…後でっ…奥まで確かめりゃい…だろ…っ…てめぇのコレでっ!」 「そうですねぇ…オンナの子になってないか、念入りに調べて上げますよ。とりあえずは…」 二人の手の動きが互いの昂ぶりを激しく扱いて、手早く極みまで追い上げる。 「ん…ふっ…もっと…先っぽ…弄…っ」 「捲簾のちっちゃいおクチ…開きっぱなしでお漏らしして…」 「は…早…っ…も…出る…からっ…ソレッ!」 「あぁ…忘れてました…っ」 天蓬は捲簾の開いてる手にカップを渡した。 互いに握り締めた性器が反り返って膨張する。 「離っ…せ!」 「ん…捲簾…もっ!」 一瞬息を詰め、捲簾の身体が前のめりに倒れ込んだ。 ビクビクと腰を震わせ低い声で呻く。 天蓬は自分の性器を押さえ込み、吐き出される白濁をカップへ落とした。 「…こんなモンですかね」 大きく息を吐き出すと、隣へ視線を向ける。 「入りきんねーぞ?」 捲簾が自分の精液の入った小さなカップを翳して顔を顰めた。 握り締めた肉芯はまだ吐精が治まっていない。 天蓬は苦笑いして近くにあったタオルを放り投げた。 「全部入れる必要無いって言ったでしょう?」 「止まんねーんだもん」 「3分の1もあれば検査には充分ですよ」 捲簾はなみなみと自分の精液が入ったカップを眺める。 「…じゃ、飲む?」 小首を傾げて天蓬に差し出すと、厭そうに身体を退いた。 「…そう言う飲み方は何だか抵抗あるんですけど」 「冗談だっての」 ククッと喉で小さく笑うと、捲簾は勢いよく立ち上がって側の流しへ自分の吐きだしたモノを適当に捨てる。 「さっさと渡して帰るぞ。どーせ結果は明日になんねーと出ないんだろ?」 「昼には出るって言ってましたね」 「ったく…こんな検査で貴重な公休が1日潰れちまったじゃねーか。早く戻って休暇を満喫しよーぜ」 「そうですね」 天蓬も苦笑いして立ち上がると、捲簾の後を追って道士の待機する診察室へと向かった。 そして次の朝。 互いに欲望のまま散々貪り合って、気絶するように眠りについたのは明け方近く。 漸く心身共に満たされた充足感に、天蓬と捲簾は抱き合って眠っていたが。 腕の中が何だかモゾモゾ蠢いている。 ぼんやりと意識が浮上して、天蓬はぽっかりと目を開けた。 まだ気怠い身体からは眠気と疲労感が残っている。 部屋の中は薄明るいが、どうせ今日は休みだ。 もう一度寝直そうと、腕の中の身体を抱き締め直そうとしたが。 「う…っ…んっ…く…うっ」 苦しげな呻き声に天蓬は漸く気付いた。 布団に潜り込んだ捲簾が、辛そうに身体を丸めて魘されている。 「捲簾?どうしたんですか?捲簾っ!」 「てん…ぽっ…腹…痛ぇ…っ」 「え?お腹!?」 慌てて布団を跳ね上げ起き上がった天蓬が捲簾を見れば、全身から汗を噴き出し震えていた。 相当辛いらしく、腹部を抱え込んで痛みに耐えている。 「そんなに痛いんですか?医局へ行きましょう…いや、道士を呼びましょうか!?」 「んっ…何…か…出…そぉー」 「………は?出る??」 「くぁっ…あああぁぁっっ!!」 一際苦しげな叫び声を上げた捲簾が、全身を大きく痙攣させた。 かなり危険な非常事態だ。 捲簾の身体を動かすのは負担を掛けて無理そうなので、とりあえず道士を呼びつけようと天蓬がベッドから立ち上がった瞬間。 ポコッ☆ 緊張した雰囲気にそぐわない奇妙な音が聞こえてきた。 「はぁ…はぁ…はぁ…あ…っ」 振り返れば、捲簾が腹部を押さえたまま荒々しく肩で息を吐いている。 しかし打って変わって先程のような痛々しい表情は消えていた。 「あの…捲簾?」 「出…た」 「はい?出たって?」 「何か…出ちゃった…みてぇ」 「何がですか?」 「さぁ?」 「ドコから?」 「俺の…そのっ…ケツ?」 漸く呼吸が落ち着いてきた捲簾が、難しい顔で布団の中へ視線を向ける。 一体ソコから何が出ちゃったのだろう。 恐る恐る天蓬が被さっていた布団をずらしてみると。 そこからコロリと現れたのは。 「………タマゴ?」 「………タマゴだな?」 捲簾の脚の間には大きさ10cm程の真っ白なタマゴが転がっていた。 |
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