White day Attraction



「ったく〜今更照れるような仲じゃねーだろ〜」
悟浄はバスタブの縁に腕を掛けて、漸く入ってきた八戒をニヤニヤと眺める。
足先からゆっくりと舐めるような視線が、ふと腹部で止まった。
皮膚が引き連れた無惨な傷跡に、悟浄は小さく目を見開く。
白く肌理の細かい肌に不釣り合いな傷。
散々抱き合ってきたのだから八戒の腹部に傷があることは知っていたが、ここまで酷いとは思わなかった。
悟浄の視線に気付いた八戒が苦笑いする。
「これ…昔交通事故に遭った時に付いた傷なんです。見ていて気分の良いモノじゃないでしょう?」
八戒は引き攣れた傷口に指を当てた。
かなり大きな傷から事故の凄惨さが分かる。
「オトコだったら傷の一つや二つ、大なり小なりあるもんだろ?俺だってあるし、さ」
悟浄は自分の頬を指差して笑った。
「でも…気持ち悪いでしょう?こんな傷」
「ぜ〜んぜん。そんな傷が出来るぐらいなら結構大きな事故だったんだろ?八戒が生きててよかった〜とは思うけど。じゃなかったら、俺ら出逢えなかったんだし」
俯いている八戒の腕を悟浄が掴んで引き寄せる。
「八戒は気にしてんだ、この傷」
「僕自身は気にしてませんけど」
「だったらいーじゃん。傷があっても無くても八戒は八戒だし」
きっぱりと言い切る悟浄に、八戒は泣きそうに笑った。
気にしてないと八戒は言うけど、無意識のうちにトラウマになっているのかも知れない。
悟浄はどうしたものかと思案する。
「八戒は俺のこの傷見て、気持ち悪いとか嫌だとか思う?」
「え?そんなこと思いませんよ。だってそういう悟浄と出逢って、好きになったんですから」
「だろ?俺も同じ」
「あ…」
悟浄の言わんとしていることが分かって、八戒は目を見開いた。
「俺が好きな八戒には傷がある。それだけじゃん」
「悟浄…」
ニッと楽しそうに口端を上げると、悟浄は八戒の腰を抱き寄せる。
引き攣れた傷跡の上に唇を押し当てると、濡れた舌で舐め上げた。
「ちょっ…悟浄!?」
八戒が慌てて身体を引き離そうとするが、抱き締める悟浄の腕は弛まない。
傷跡の端から端まで、何度も舌を這わせて丁寧に舐った。
舌先で擽られると、何とも言いがたい感覚に肌が粟立つ。
ヒクヒクと腹部が蠢く感触が舌に伝わってきた。
悟浄の肩を掴んでいる八戒の手に力が入る。
チラッと悟浄が上目遣いに八戒の様子を窺った。
「あれ?もしかして八戒のココ…性感帯ってヤツ?」
「知りません…よ…そんな…っ」
微かに呼吸を乱して、八戒が吐息交じりに声を漏らす。
なおも舌で傷跡を舐めながら、悟浄は視線を落とした。
八戒の性器は緩くだが、頭を擡げ始めている。
「ふぅ〜ん…新たに開発ってな感じ?」
「も…くすぐったい…ですっ…て」
「うそうそ。悦いんだろ?コッチはイイ感じじゃん」
悟浄は一旦傷跡から唇を離すと、勃ち上がりかけている八戒の性器をキュッと緩く握った。
「あっ!」
ドクン、と。
大きく脈打って、雄の芯が硬くなる。
手の中の性器を撫でるように擦ると、血管の脈動が直に伝わった。
「…舐めてやろっか?」
見下ろしている八戒の視線を捕らえ、わざと淫猥な表情で唇を舐めると、八戒の雄はビクビクと震える。
八戒の素直な反応に悟浄が双眸を眇めて生唾を飲み込み、口淫を施そうと口を開けた途端。
「っくしょんっっ!!」
八戒が派手なクシャミをした。
続けざまに3回クシャミをする。
「…僕このままじゃ風邪引きそうなんですけど」
かぁっと羞恥で頬を染め、八戒が情けない表情で頭を掻いた。
今のクシャミで、悟浄の色気が少し萎えてしまう。
まぁ確かに。
自分が抱き締めたせいで、八戒の身体が少し濡れてしまった。
そのままでボンヤリ立っていれば身体も冷えるだろう。
「えっと…とりあえず身体流してもいいですか?」
「あー…そうだな、うん」
悟浄が頷いて八戒の身体を腕から解放した。
八戒は申し訳なさそうに笑みを浮かべて、シャワーを捻る。
すぐに暖かいお湯が降り注ぎ、八戒がざっと汗を流した。
再びバスタブの縁に肘を突いて、悟浄は八戒の背中を眺める。
「イイ身体だよなぁ…」
自分より線は細いが均整が取れ、無駄な肉はなく結構引き締まっていた。
思った以上に着痩せするのかも知れない。
平然と悟浄をド突いたり投げ飛ばしたりするのも、この身体を見れば納得できる。
「八戒さぁ〜」
「…何ですか?」
悟浄の声に浴びているシャワーを外して八戒が返事をした。
「何かやってた?空手とか柔道とか…武道っつーの?」
「どうしたんですか?いきなり」
一旦シャワーを止めると、八戒はスポンジを泡立てながら悟浄を振り返る。
悟浄は縁から身を乗り出して腕に顎を乗せた。
「だって俺のこと簡単に放り投げるじゃん。俺みたいなデカイ男を吹っ飛ばすなんて簡単に出来ることじゃねーだろ?普通」
「特には何もしてませんよ」
「ええっ!?嘘だろぉっ!!」
八戒の返事に納得いかない悟浄は更に身を乗り出す。
ムキになって突っかかってくる悟浄に、八戒は苦笑した。
「本当ですよ。ただ子供の時は部屋に居ると、天ちゃんに引っ張り出されて組み手の相手とかさせられましたけど」

そう言えば、と悟浄が首を傾げる。
確かああ見えて、天蓬は武道全般が得意だと前に八戒が言っていた。
その天蓬に付き合わされていたのなら成る程と頷ける。

「でもよ〜八戒は別にやってなかったんだろ?普通同じ道場通ってる奴とか、学校で部活に入ってやるとかしねー?」
子供同士だとしても、素人相手には危険じゃないかと。
「道場ではまぁ、天ちゃん敵無しだったらしいので。普段はボーっとしてますけど、ああ見えて凶暴でキレやすいんですよ。容赦とか手加減って言葉は天ちゃんには皆無ですから」
八戒はスポンジで身体を洗いながら小さく笑った。
意外だったのか悟浄はきょとんと目を丸くする。
「それに、学校ではダメだったらしいですよ。天ちゃん中身はともかく見た目だけは美少年だったので。柔道とかになると、上級生なんかがわざと寝技ばっかり掛けてきたりして」
「あ〜それでやっぱりキレたんだ」
「その点は同情しますけど。押さえ込まれて、耳元でハァハァ言われちゃ気持ち悪いでしょうねぇ」
「俺だってヤダよ」
何となく事態を想像して、悟浄が顔を顰めた。
「まぁ、僕にも護身術ぐらい出来た方がいいだろうって。結構無茶なコトされましたけどね」
八戒は肩を竦めると、身体に付いた泡をシャワーで洗い流す。
何気なく八戒の話を聞いていた悟浄が、突然ハッと我に返った。
「ああああぁぁっっ!!」
絶叫しながら勢いよくバスタブから立ち上がる。
「ど…どうかしたんですか?」
「何で身体洗っちゃうんだよぉっ!折角俺のスペシャルテクで洗ってやろうと思ってたのにっ!!」
「…何のテクですか」
八戒がジットリと胡乱な視線で悟浄を睨め付けた。
ブツブツとしつこく文句を言う悟浄に呆れながらも、八戒はシャワーを止めて悟浄を手招く。
「ほら、悟浄。とりあえずお湯から上がって」
「えぇ〜?」
唇を尖らせて拗ねたまま返事をする。
「髪洗って欲しいんでしょう?」
手元にシャンプーボトルを引き寄せると、八戒はニッコリ微笑んだ。
悟浄はふて腐れた態度で渋々バスタブから出る。
「はい、コッチに座って背中向けて下さい」
悟浄を自分の目の前に座らせて、後ろを向かせた。
大人しく座った悟浄の髪に、シャワーの湯で湿らせる。
手に取ったシャンプーを髪全体に馴染ませると、指先でマッサージしながら泡立てた。
八戒は絶妙な強弱をつけ、頭皮を刺激しつつ髪を洗っていく。
「あー…すっげ気持ちイイかも〜」
蕩けた表情で微笑むと、悟浄が溜息吐いた。
それほど八戒の指先が心地良い。
されるがままにボンヤリしていると、背後で八戒が小さく笑った。
「そんなに気持ちいいですか?」
「んー。やっぱ人に洗って貰うのっていいよなぁ〜。それに八戒上手いし」
「そうですか?力加減がよく分からないんですけど」
「丁度良い…」
「そのまま寝ちゃわないで下さいよ?」
八戒が悟浄の髪に指を差し入れ、余分な泡を落とす。
もう一度シャワーを捻ると、髪を手櫛で梳きながら泡を洗い流した。
その後にコンディショナーを擦り込んで馴染ませると、同じように湯で落とす。
「はい、終わりましたよ」
「はぁ…さ〜んきゅ!今度っからずっと八戒に洗ってもらおっかな〜」
悟浄が心地よさの余韻に浸っていると、ペタッと八戒の掌が背中に触れた。
「ん?」
「ついでですから、身体も洗いましょうねvvv」
「あー…うん」
何も考えずに悟浄が返事をするのに、背後で八戒がほくそ笑む。
スポンジで豪快に泡を立ててから手に取り、悟浄の肩口にふんわり塗りつけた。

するり、と。

泡の付いた掌が、悟浄の首筋を優しく撫で上げる。
「ん…」
気持ち良くて目を閉じていると首筋から肩、肩胛骨へと掌がゆっくりと這っていった。
ふと、背中を撫でていた掌が首筋まで戻って、泡を落として鎖骨まで下りてくる。
「………ん?」
妖しく蠢きだした八戒の掌に、悟浄はパッチリと目を開けた。
肩から腕を伝い、背中まで戻った手がスルッと腋を通り抜けて前に回わされる。

「ひゃっ!?」

泡に濡れた指先が、胸元の突起を引っ掻いた。
指の腹で回すように押し潰されて、漸く悟浄は自分の迂闊さに気が付いた。
「ちょ…待って…はっか…あ…んっっ!」
腰を浮かせて逃げようとすれば、力強い腕が腰を抱き寄せる。
八戒と密着した下肢に熱い感触。
悟浄の双丘に既に勃起した雄が擦り付けられた。
驚いて藻掻くが、八戒の腕は弛まない。
「八戒っ!ココじゃ逆上せちま…うあっ…ん」
凝りを持ち始めた乳首を、八戒の指が強く擦り立てる。
悟浄はビクビクと身体を跳ね上げて、甘い嬌声を浴室に響かせた。
「ヤダ…八戒ぃ」
「だって…悟浄も期待してたんでしょう?」
「それは…っ」

されるんじゃなくて、俺が八戒にシたかったんだよっ!!

反論したくとも、口を開けば媚びて甘えるような声しか出ない。
「言ったでしょう?髪も身体も…全部僕が綺麗に洗って上げますって」
「そ…だけどっ…んぅっ!」
捏ねながら乳首を引っ張られて、悟浄が声を詰まらせた。
弄られている部分から、トロリとした快感が下肢まで重く落ちてくる。
悟浄は乳首を刺激される度に股間が疼き、雄が芯を持って勃ち上がった。
既に先端は先奔りが溢れ出て、性器をしとどに濡らしている。
八戒が悟浄の肩口から前を覗き込み、口元を嬉しそうに緩めた。
「今日は随分と感じやすいみたいですね…もうこんなに濡らして。ココも綺麗にしないといけませんね」
「は…あ…やくっ…こす…て…っ」
大きく胸を喘がせながら、悟浄は欲情に潤んだ瞳で八戒を見上げる。

ここが何処だとか。
自分の淫猥な姿など、もうどうでもよかった。
熱が燻る身体をどうにかして欲しい。
硬く勃起した性器を強く扱いて欲しくて。
何でもいいから、ただ吐き出したかった。

悟浄は八戒の胸に背中を擦り付ける。
「早く…もっと触って」
快感に蕩けた表情で八戒を見上げ、悟浄が扇情的な笑顔を浮かべた。
八戒の喉がゴクリと鳴る。
「いっぱい…触って上げますよ」
悟浄の顔を自分に寄り掛からせて上向かせると、八戒は激しく唇を貪った。



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