White day Attraction |
で。 どうなったかと言えば、当然の結果というか。 「悟浄ぉー…大丈夫ですかぁ〜?」 「………ん」 八戒の執拗な手淫によって、悟浄はバスルームで撃沈した。 さすがに逆上せそうなので、最後まではしなかったが。 すっかり腰砕けの悟浄は、ふにゃっと八戒に身体を預けきっていた。 頭も快感で飛んでいるらしく、遠くのお空にイッたきり戻ってこない。 八戒が丁寧に身体についた泡と白濁をシャワーで流している間も、放心してされるがままの状態。 丁寧に悟浄の身体を洗いながら、八戒は上機嫌で笑みを浮かべる。 「…これなら大丈夫そうですかね?」 簡単に正気に戻られては面白くない。 そう考えて、いつもよりも濃密に。 しつこくしつこく、悟浄がグッタリと反応が鈍くなるまで達かせ捲ったのだ。 「やっぱり抵抗されちゃったら…コワイし」 それはコッチの方だっ!と、悟浄が聞いていれば間違いなく突っ込みを入れるだろう。 いざと成れば腕力に物を言わせるのは八戒だ。 「さてと。綺麗になりましたね。悟浄?身体冷えちゃいますからお風呂出ましょうね〜」 「んー…」 八戒は悟浄の身体を支えて立ち上がらせると、さっさと脱衣所に出た。 ぼんやり放心中の悟浄を一旦ガラス戸に凭れ掛けさせ、用意してあったバスタオルを手に取る。 「そのまま立ってて下さいね。まだしゃがみ込んで寝ちゃダメですよ?」 「んー…」 結構思ったより長風呂していたらしい。 身体が火照っていて、外の空気が丁度良く感じる。 二人の身体も仄かに上気して色付いていた。 八戒はタオルで自分と悟浄の水分を手早く拭うと、用意していたパジャマを先に身に着ける。 「さてと。悟浄も着ちゃいましょうね〜vvv」 ニッコリ微笑んで、八戒が悟浄の着替えを手に取った。 勿論、先程悟浄が八戒用に買ってきた…はずのセクシーネグリジェだ。 幸か不幸か、悟浄は身に迫る緊急事態に全く気付かない。 八戒に散々追い上げられて頭が飛んでいるのと、長風呂で逆上せている相乗効果で、相当呆けていた。 ぼんやりと顔を上向かせているが、視線は何処を見ているのか焦点が合っていない。 「はい、悟浄〜。着せますから腕バンザ〜イって上げましょうね〜」 八戒は子供に言い聞かせるように、優しい声音で悟浄に話しかけた。 ノロノロとした動作で、状況を把握していない悟浄は言われる通りに腕を上げる。 「それじゃ、まず右手…で、左手。あ、頭に通しますよ〜」 普段から子供に服を着せ付けていくのに慣れている八戒は、手際よく袖と頭を通していった。 「はい、良くできました。お終いですよvvv」 裾を落として着せ終わると、八戒は悟浄の腕をそっと下ろさせる。 悟浄はぼんやりと立ったまま、壁に背中を預けていた。 散々強制的に吐精させられたせいか、疲れで眠気が襲っているらしい。 瞼が半分落ちて、トロンとした視線を八戒に向けていた。 改めて八戒は悟浄の姿を眺める。 「…案外似合っちゃってますねぇ」 感心しながら八戒がポツリと呟いた。 さすがに一般の感覚として、贔屓目を抜いても女性物の。しかもこんなセクシャリティ露わなネグリジェが、オトコの悟浄に似合うとは思っていない。 はずだった。 こういう類の物は、女性の柔らかなラインじゃなければ似合わないと思っていたから。 冷静に考えて、自分も悟浄もどこから見たってオトコで。 柔らかな肉感は皆無だ。 確かに八戒は線が細い印象があるが、それだって普通の女性に比べれば骨格はしっかりしている。 そういう自分に着せたって滑稽なだけなのに、悟浄は一体何を考えてこんな物を買ってきたのか。 そう思うとムカツキを通り越して呆れてしまった。 ほんの意趣返しのつもりで、悟浄に着せたはずだったのに。 「困りましたね…悟浄ってば可愛いじゃないですかぁ」 フリルのふんだんに使われたシルクオーガンジーのネグリジェが、悟浄のスラッとした肢体をほんのり浮き上がらせて卑猥だ。 背中が腰元まで大胆に開いて、引き締まった綺麗な肌が露出しているのも触れたくなる。 悟浄が正気に返り真っ赤な顔をして慌てるのを見れれば、八戒的には溜飲下がって満足なはずだったが。 そうもいかないようだ。 八戒の身体の事情として。 腕を組んで悟浄の姿を眺めながら何やら思案していた八戒は、一人納得してうんうんと頷いた。 「ま。悟浄の思惑を叶えて上げる気は元から更々ありませんでしたけど。結果的に一緒ならオッケーですよねvvv」 悟浄が正気なら『立場が全然逆だろっ!』と涙目で喚き散らすだろう。 生憎悟浄は放心中で、八戒の物騒な言葉も聞こえていなかった。 「さてと、悟浄。ベッドに行きましょうか〜」 「ん…」 八戒が悟浄と手を繋ぐと、素直にテクテク付いてくる。 悟浄を連れてリビングに戻った八戒の視界に、ある物が入ってきた。 ふとソレを眺めて微笑んだ八戒が、歩みを止める。 「………。」 何事かを考え始めると、悟浄がぼんやりと振り返ってきた。 「…八戒?」 「あ、何でもないですよ。僕戸締まりしてきますから、先に休んでて下さい」 「ん…分かった」 小さく頷くと、悟浄は言われた通りフラフラと寝室へ入る。 悟浄がベッドに倒れ込んだのを眺めてから、八戒は玄関の戸締まりとキッチンの火元を確認した。 電気を消してリビングに戻ると、ローテーブルの上をじっと見下ろす。 八戒の瞳に妖しい光が煌めいた。 「…折角貰ったんだし、ね」 ニッコリ微笑みながら、八戒が紙袋を手に取る。 それは、さっき悟浄から貰った大玉の飴。 袋を探って一粒摘むと、口の中に放り込んだ。 懐かしい砂糖の甘い味が口一杯に広がる。 口中で飴をコロンと転がして味わうと、八戒は袋を揺すった。 「…結構ありますね」 きっと悟浄のことだから、色も味も豊富な飴を全種類買ってきたに違いない。 八戒は嬉しそうに笑みを浮かべた。 飴の袋を持ったまま、リビングの電気を消すと悟浄の待つ寝室へ入る。 そっとドアを閉めると、悟浄は広いベッドに俯せになったまま目を閉じていた。 淡い間接照明に浮かび上がるその表情が、何だかあどけない。 普段は自信満々でオトコっぽい悟浄のこういう無防備な表情を見れるのが、八戒は何より嬉しかった。 それは悟浄が八戒に気を許して安心している証拠。 きっとこんな悟浄の一面を知っているのは、身内の捲簾ぐらいだろう。 八戒はベッドの端に腰を下ろすと、まだ生乾きの髪を優しく梳いた。 「悟浄…疲れちゃいました?」 「んー…へーきぃ」 そう答える悟浄の声は、今にも眠りそうな程小さい。 「まだ寝ちゃわないで下さいよ?折角のホワイトデーなのに…寂しいでしょう?」 「あ…そっか…ふぁっ!」 悟浄は眠そうに目を擦ると、パタッと仰向けに身体を転がした。 ぼんやりとした眼差しで、八戒を見上げてくる。 八戒に優しく頭を撫でられていると、気持ち良くて再び瞼が下りそうになった。 「悟浄ってば…そんなに眠いんですか?」 「眠い…つーより…気持ちい…かな」 「え?」 「八戒の手がさ…何か…フワフワしてくる」 悟浄が八戒の手を掴んでウットリ微笑むと、クスクスと柔らかい笑い声が耳を擽った。 何だかこういうのも幸せでいいかも。 つらつらと考えながら八戒を見上げていると、口元が僅かに動いてることに気付いた。 「あ…れ?何か食ってんの??」 悟浄は手を挙げて、八戒の膨らんでいる頬を撫でる。 ゴロゴロとした感触が手に伝わってきた。 「ん?さっきの…飴?」 「ええ。美味しいですよ?」 「寝る前に菓子なんか食っていーんですかぁ〜センセー?」 「後でちゃんと歯磨きしますって」 肩を竦める八戒に、悟浄は苦笑を零す。 「悟浄も食べます?」 「あ?俺はいらねーよ」 甘い物が好きじゃないのを分かっていながら、いきなり何を言い出すのか。 悟浄が嫌そうに顔を顰めると、八戒の意味深に微笑んだ。 「まぁ、そう言わずに。折角貴方が買ってきたんですから」 そう言うと、八戒が楽しそうに悟浄の上へ屈み込む。 両手で頬を覆われたと思った瞬間。 「え…んぁ?」 悟浄に八戒が触れるだけの口付けをする。 何度か唇を啄まれると物足りなくなって、悟浄は無意識に口を開いて舌を覗かせた。 ふいに八戒の笑みが嬉しそうに輝き、悟浄に応えて深く口付けてくる。 「はっ…あ…あ?」 八戒から口移しで飴が移された。 舌先に甘い味が広がっていく。 悟浄は眉を顰めて飴を押し返そうとすると、八戒の舌が飴ごと絡みついてきた。 喉を落ちていく甘い唾液に、悟浄は咽せそうになる。 八戒がもう一度飴を自分の口腔に引き取ると、ゆっくりと唇を外した。 「く…っ…げほっ!うわ…甘ぇ…」 喉が焼けるような甘さに、悟浄が咳き込んだ。 「どうでした?美味しいでしょう」 「俺が甘いのダメだって知ってんだろぉ…うぇっ…」 心底嫌そうに顔を顰める悟浄に、八戒は小さく首を傾げる。 「そんなに甘いですかねぇ…」 「だって砂糖のカタマリじゃん」 「まぁ、そうですけどね」 「あ〜後味悪ぃー…喉がイガイガする」 悟浄が喉を押さえながら舌を出した。 本当に甘い物が苦手らしい。 八戒は口の中の飴をカリッと噛み砕いた。 「口直し、って言いたい所ですけど。今キスしたらやっぱり甘いですよね」 「…キスが甘いのは好き」 「あ、いえ。そういう甘いじゃなくて。まだ飴の甘さ残ってますから」 「別にいいけど」 悟浄が八戒の腕を掴んで強引に引き寄せる。 「わっ!悟浄??」 バランスを崩した八戒は、慌てて手を付き身体を支えた。 起き上がろうとする八戒を、悟浄は抱き締めて拘束する。 「八戒のキスは…そのままでも甘いだろ?」 「もぅ…何言ってんですかぁ」 面白そうに口端を上げる悟浄に、八戒は頬を赤らめた。 「あれ?何赤くなってんの〜?さては俺のカッコ良さに惚れ直したか?」 わざと男臭い笑みを浮かべて双眸を眇める悟浄に、八戒はきょとんと目を丸くする。 次の瞬間。 「……………ぷっ!」 八戒がいきなり噴き出したかと思うと、悟浄の肩口に顔を伏せて豪快に笑い出した。 突然笑い出した八戒に、悟浄は何が何だか分からなくて首を捻る。 発作のように笑い続けている八戒を眺めていたが、次第に悟浄の眉間にクッキリ皺が寄った。 「何笑ってんだよっ!感じ悪ぅ〜い!!」 不機嫌そうにムッと頬を膨らませる悟浄に気付いて、八戒は呼吸を整えると顔を上げる。 しかし。 「ぐふっ…ちょっ…すいませっ…くぅっ!」 悟浄の顔を見てまたしても噴き出した八戒は、身体を丸めて肩を震わせた。 ますます悟浄は機嫌を損ねてふて腐れる。 「もうっ!いい加減にしろよなっ!何なんだよさっきっからっ!!」 ペシッと八戒の頭を叩いて、悟浄が癇癪を起こした。 それもそうだろう。 理由も分からず、いきなり顔を見て笑われたんじゃ気分が悪い。 八戒はひたすら頭を下げながら、必死で笑いを治めた。 「は…あ…ごめんなさい。悟浄が笑わすこと言うから…ついつい」 「あ?俺そんなこと言ったか??」 悟浄は不思議そうに八戒を見つめると、首を傾げて考え込んだ。 別段おかしなコトは言ってないはずだが。 八戒がニッコリ微笑みながら、悟浄の上に覆い被さってきた。 掌が優しく剥き出しの肩を撫でる。 ん?俺、確か風呂上がって…八戒にパジャマ着せて貰ったよな? 「悟浄がそんな色っぽい格好で、男っぽいコト言うから…」 「は?色っぽい格好って??」 悟浄は瞳を瞬かせると、自分の姿を改めて見下ろした。 その瞬間。 悟浄が顔を強張らせ硬直した。 スケスケフリフリ〜で、わぁ!着心地サイコーねvvv 「何てゆーかあああぁぁっっ!!!」 突然大声で絶叫すると、悟浄は八戒を押し退け身体を起こす。 身体の線も露わな、どころか殆ど丸見えのセクシーネグリジェ姿。 思わず呆然と悟浄は自分の姿を眺めてしまった。 「可愛いでしょ?悟浄ってばあんまり似合っちゃうんで、ビックリしちゃいました〜」 八戒が頬を染めてウットリと瞳を潤ませる様子に、悟浄は思いっきり頬を引き攣らせる。 コイツの好みって一体…。 思いもかけない八戒の一面に、悟浄は深々と項垂れた。 |
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