インハーモニシティから調律曲線を求める
(Inharmonicity to Tuning Curve) v0.7.1

その1: ピアノ弦のインハーモニシティ値から調律曲線を求めるための 一つの試案です。

例えば 以下の様なデータがあります。

XY
12.5
28.0
319.0
445.0

それに当てはまる式を求める為に,統計解析や回帰分析で使われている 最小2乗法(の指数関数 - 計算方法の説明は省略;)を使って y = a exp(b x)と言う式の値 a = 1.05409, b = 0.95361を得ます。
その式をデータと重ねて表示して見ます。 (y軸(上下方向)は対数目盛になっています)

Data & Line Fig.1
  1. イマジナリー・ピアノ

    それを Designで作成したイマジナリー・ピアノ (インハーモニシティ値が対数グラフで直線的に変化しているもの) で試して見ます。

    初めに「Java Tuner(JT)」 で見た [Design]のインハーモニシティ値です。

    Design Inh. Fig.2

    そこから4つのデータを取り出します。

    Key#Inha.
    130.098
    250.083
    370.173
    490.499

    それから芯線の部分と巻き線の部分を別々に最小2乗法[I2TC]で計算して データを選択して2つの直線にします。
    比較の為[JT]のデータと重ねて表示して見ます。 ([JT]の2本巻き線の部分は片側1本のみとしています)
    赤色点が [JT]のデータで 黄緑色の+点が最小2乗法[I2TC]のデータです。

    Design JT & I2TC Inh. Fig.3 Design JT & I2TC diff Inh. Fig.4

    右はその差(-0.1〜1.1)の値です。 (高音部の段差は番手の差と思われます)

    では Tuningをするとどうなるでしょう? 以下は [JT]でのシミュレーションです。

    Design JT tuning Fig.5

    同じ条件で最小2乗法[I2TC]のインハーモニシティ値で Tuningをした値と重ねて見ます。

    Design Tunig Fig.6 Design Tunig diff Fig.7

    上右の図は2つの差(-0.2〜1.2[cent])の値です。

  2. 実際のピアノ

    それでは実際のピアノではどうなるでしょう? 同じく[JT]から[sample_1]を使って見ます。

    UP JT Inh. Fig.8

    その弦データから計算したインハーモニシティ値から 5つのデータを取り出します。

    Key#Inha.
    130.138
    250.099
    370.199
    490.562
    611.8

    その数値を最小2乗法[I2TC]で計算した値と重ねて見ます。

    UP Inh. data Fig.9 UP Inh. diff Fig.10

    上右の図は弦データと計算値との差(-0.1〜7)です。
    それからTuning(シミュレーション)をするとどうなるでしょう?
    まず[JT]でのデータです。

    UP JT tunig Fig.11

    そして最小2乗法[I2TC]で計算した値と重ねて見ます。

    UP Tuning Curve Fig.12 UP cent diff Fig.13

    上右の図は2つのデータの差(-1〜3[cent])です。

  3. フォルテピアノ [Broadwood 1815]

    今度は[JT]からフォルテピアノ[Broadwood 1815]で試して見ます。

    Broadwood JT Inh. Fig.14

    そこから5つのデータを使います。

    Key#Inha.
    130.162
    250.127
    370.168
    490.362
    611.716

    最小2乗法[I2TC]で計算した値と重ねて見ます。

    Broadwood I2TC Inha. Fig.15 Broadwood Inh. diff Fig.16

    上右の図は2つのデータの差(-2〜0.2)です。 (範囲以外のデータは削除しています)
    Tuning(シミュレーション)ではどうでしょう?

    Broadwood JT Tuning Fig.17

    2つのデータを重ねて表示して見ます。

    Broadwood cent Fig.18 Broadwood cent diff Fig.19

    上右の図は2つのデータの差(-0.5から2)です。 (範囲以外のデータは削除しています)
    その差をやはり大きいと見るか,以外と少ないと見るか...でしょうか。

その2: インハーモニシティの曲線から調律曲線を求める (Inharmonicity curve to Tuning Curve)
I2TC Fig.20
 Class File ・ i2tc.jar(SIZE = 27033)
: MD5 (i2tc.jar) = 9f321ac651b421cf3424e7fa6eec2533
 Source File ・ i2tc.zip(SIZE = 15587)
: MD5 (i2tc.zip) = 492269639f3d52da6a15406056e24d3b
使い方:

【調律曲線の求め方】
  1. [Input]画面でインハーモニシティ値のデータを最低でも2点 出来ればバス弦の2点と芯線の2点の合計4点,正確さを求めるなら それぞれ3点以上あるといいかも知れません。
    [Key:]番号(もしくはカーソルで選択)と[Inh.:]値を入力して [Set]ボタンを押します。
    (その時のデータは弦データからの計算値でも測定値でも構いません)

  2. [Inha.]ボタンを押すと入力されたデータから[Straight]では 最小2乗法、[Curve]では曲線の計算式で インハーモニシティ値が表示されます。

  3. そして[Tune]ボタンを押す事で調律曲線が シミュレーションされます。
    [Beats]スライダーでうなりの数(0〜3まで)・ エクステンション(引き延ばし)が加減されます。

  4. それらのデータは[Save]ボタンで ファイルに保存する事が出来ます。([Save]の項参照)
    ファイルは「キー番号・データ値」のテキストデータです。

参照> ピアノ-弦-設計入門 (Design)

参照> Java Tuner

参照> 計算式から求める調律曲線のシミュレーション (Formula Tuning Simulation)


参考文献:
Dobashi.M
Last modified: 1月 03日 火 15:40:55 2023 JST