◇◆◇ 2002.2.18 PARTV ◇◆◇

◇◆◇ タバコ工場と怪しげな若者 ◇◆◇
 ホテルへ戻るのに,ちょっと寄り道してタバコ工場に行ってみる。1750年にタバコ工場として建てられたこの建物は,現在はセビリア大学の法学部として使われている。いろいろな張り紙がしてあって,歩いているのは学生達で,石造りの建物ということで,なんとなく母校に共通するものがあった。
 ここが有名なのは,ビゼーの「カルメン」で主人公カルメンとともに女工さん達がたくさん出てくる場面,あれがこのタバコ工場とされているから。私はかなりカルメン好きだが今や大学として使われている元タバコ工場にはなんの面影もなかった。まあ,実際カルメンがいたわけでもないし(^_^;)。
 ホテルの道を挟んで向い側はムリーリョ公園となっている。スペインではいろいろな所でタイルが使われていて,カラフルでかわいらしい。この公園のベンチにもタイルが使われていた。
 このベンチに座っているとみすぼらしいカッコの若者がすぐ近くに座ってきた。なんだか怪しげだなあと思っていたら,「自分はアメリカ人で,お金をすられてしまった。パンを買うお金もないので数ユーロ,お金をくれないか。」と言ってくる。よくある手口かと思い,「それならツーリストポリスか,大使館に行った方がいい。」と言うと,「行って手続きをしてきたが,今日はお金を貸してもらえなかった。」と言う。そして私達がかなり怪しんでいると思ったからか自分の住所を書いて渡してきた。それでも,普通本当に困っていたら同郷の人にまず声かけるでしょ,日本人に声かけてくるのが怪しいなあと思って,「おなかが減っているのなら,パン買ってあげるから来なさいよ。」と言ってみた。たんにお金がほしいだけなら断るだろうし,もしついてきたとして何かしようとしてもお店の中なら店員もいるし安心だと思ったのだ。
 しかし,EIKIが逆に,「そんなん危ないから,数ユーロあげとけ。」と言ってきた。数ユーロで済むなら渡してしまった方がややこしくないだろうと言うのだ。財布を見ると3ユーロほど小銭があったのでそれを渡すことにした。「ありがとう。」と言って若者は去っていったが真相はいかに?確かに服とか手とか汚れていて疲れた感じがしたし,言ってくる額もかなり少額だったので本当に困っていたのかもしれない。でもまあパンくらいは食べれるだろう。こちらも別に被害は被ってないからよしとしよう。
 ちょっとのどが乾いたので,ホテルの横のバルでひとやすみ。私はいつものオレンジジュース,EIKIはカフェオレを頼む。EIKIは「Cafe con leche」を覚えたので得意気に使っている。エスプレッソに温かいミルクがたくさん注がれる。私は「Orange juice」と言うと,何やら分からぬ単語で聞き返された。店員さんが,黒板を指す。「Tumo 〜natural juice〜」と書いてある。目の前に出されたのは期待通りのオレンジジュース。スペイン語でtumoと言うらしい。

もとタバコ工場
今はセビリア大学の校舎
ムリーリョ公園
タイルのベンチとアルカサルへ続く門

◇◆◇ 情熱のフラメンコ ◇◆◇
 ホテルに戻り,ちょっとおめかししてフラメンコへ出かける。7時前でまだ明るいが少し距離があるのでタクシーで行く。案内された会場はかなり大きかった。後ろは食事つきの人のテーブル席だが,私達はドリンクだけで前の方の席で見れる。この日入った客は,私達と小学生か中学生の団体2組。団体客が入っているからいいが,大きさのわりにお客が少ない。
 フラメンコは全員での群舞,ペア,男女のソロなどいろいろなパターンで進められた。フラメンコは放浪の末アンダルシア地方に住み着いたジプシー達が,この土地の民謡と踊りをとり入れて形にしたものが元になっている。フラメンコと言うとまず踊りを思い浮かべてしまうが,歌が中心でそれをもとに踊りがあり,伴奏としてのギターがあるらしい。踊りはショーとしてフラメンコがもてはやされるようになってからその存在が大きくなったようだ。
 そうとは言ってもやはり踊りに目が行く。女性の魅惑的なブラセオ(腕の動き),男性の力強いサパテアード(足の動き),人間業と思えないカスタネットの指さばき。静と動の部分があり,静の部分で貯めこんだエネルギーが動の部分で一気に開放されるようだった。フラメンコの靴には踵とつま先に釘が打ちつけてあり,それを床に打ちつけることで体に響くようなリズムが刻まれる。
 途中にはカルメンの寸劇もあった。カルメン役は下の黄色いドレスの女性だったのでうまい人なのだろうが,群舞の時の踊りを見ていると他の女性に比べて無表情で,余り力が入ってなさそうに見えたのだがどうなのだろう?一番感動したのは青いドレスの女性のソロだった。長いドレスをうまくさばいてサパテアードを打つ。その動きはしなやかかつ情熱的だった。
 残念に思ったのが,団体の子供達とタブラオの従業員の行動。子供達は途中盛りあがってきたのか手拍子を始めたのだ。よくガイドブックに書いてあるが,初心者のパルマ(手拍子)はやはり慎んだ方がよいと思う。歌い手(カンタオール)の二人が歌いながらパルマを打っていたが,その打ち方は正確にリズムを刻んでいるわけではなく何か独特な感じで,やはり何も分からずに手拍子してしまっては台無しにしてしまうと思う。しかし最後には全員で踊り,手拍子を催促をする場面もあり,この時には私達も一緒に手拍子をした。
 タブラオの従業員は,1ドリンクなので注文を聞き,飲み物を運んできてくれるのだが,ショーが始まってからしかも思いっきり前を横切りながら注文取りをし,運んでくるのである。しかもショーの最後の方では,まだ前でショーをやっているのに写真を撮ってくる。記念にくれるのかと思えばやはり売ってくるのである。別に見ている私達の写真はいらないから前をうろうろしないで,という感じだった。

カルメンとホセ役の男女
このシーンはカルメンじゃないけど...
一番感動した女性の踊り
この長いドレスをさばくのがかっこいい

女性のような上半身の動きは少ないが
力強いサパテアードは体に響いてくる
村の祭のようなかわいい衣装で登場
カスタネットの指の動きがすごい

 ショーが終ってホテル近くに見つけたレストラン Modesto に食事に行く。ミックスサラダ,スープ,パエリアを注文。まずパンとサラダが出てきたが,サラダだけでもすごい量だ。こちらに来て思ったのがオリーブの実がおいしいということ。日本では独特な臭みが苦手でたいていよけてしまうのだが,スペインのは何か違う。なかなかおいしいのだ。
 スープはハムとクルトンが入ったものだったが,スープにましてハム自体がかなり塩辛かった。そしてパエリア。大きなパエリア鍋が運ばれてきて思わず苦笑してしまった。こんなに食べきれるはずがない。でもおいしかったので,3分の2か4分の3は食べただろう。
 10時過ぎくらいになって店内が混んできた。やはりこちらの夜は遅いようだ。勘定を頼むと予想より高い金額。なぜかと思えばパエリアが2人前になっていた。量が多いはずだ。チェックし忘れていたが,パエリアは2人前からしか注文できないお店が多いようなので,ここもそうだったのかもしれない。

Hotel Alcazar
シンプルだが清潔な部屋
ホテルから見たヒラルダの塔
どこからでも見えるこの塔は
位置確認の目印になる


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