GLAMOROUS






 サアサアと頭から湯が落ちてくる。
 湯気に包まれたこもった空間で、ヒカルは顎を仰け反らせた。
 シャワールームの床に尻をついて、力なく投げ出された足の指先が時折ぴくぴくと動いている。
 後ろからアキラに抱き竦められ、肌の触れ合っている背中が焼けそうに熱い。
 アキラの右手はヒカルの喉をそろそろと撫で、左手はすでに反り上がったヒカルの分身を優しく包んでいる。不規則に落とされる項や肩へのキスが、ヒカルの開いた口唇から微かな声を誘わせた。
 捻りっぱなしのシャワーノズル。二人に惜しみなく湯を降り注ぐ。全身を伝う水に少しずつ理性を溶かし、ヒカルは頭の芯がぼうっとしてくる感覚に心地よく身を委ねていた。
「あ……、ア……ん」
 ゆるゆると擦り上げられた先端が零す涙を、シャワーの湯が洗い流す。その飛沫の感触すら確かな刺激に化ける。
 アキラの指は、水の流れに合わせてヒカルの身体を優しく辿っていた。すでに硬くなっている胸の突起を指の腹で転がし、柔らかい首筋に噛み付くと、ヒカルは悲鳴ともつかない高い声をあげる。
 濡れてべったりと張り付いたヒカルの金の前髪を掻き上げて、アキラはそっとヒカルの顔を自分に向けさせた。少しうつろな目でアキラを見返すヒカルの上気した頬が愛らしく、頬に額に小さな口付けを落とす。
 深く口唇を重ねて、アキラは左手に力を込めた。
「んんっ……」
 合わせた口唇の隙間からヒカルの嬌声が漏れる。ヒカルの身体にぐっと力が入ったのが肌越しに伝わってくる。
 アキラは背中からきつくヒカルを抱き締めたまま、扱く左手の速度を上げた。
「ん、んん」
 ヒカルの脚がぴんと伸びて、指先がぐっと反った。逃げるように引かれる腰をアキラは太股で挟み、動かないように押さえつける。
「ん、ん、――あ、アアッ」
 酸素を求めて僅かに離れた口唇の隙間から、ヒカルはひときわ高い声をあげた。
 アキラが握り締める左手の中で、硬く勃ち上がっていたものがビク、ビクと揺れる。
 吐き出された白い液体は、すぐにシャワーに流されてキレイになくなっていく。
 ハアハアと肩で息をつき、ヒカルは後ろのアキラに向かって身体を捩らせた。向かい合い、アキラの首に腕を絡ませて、その口唇を再び合わせる。
 わざと舌を突き出すように口唇の間で絡めて、ヒカルは薄ら目を開いた。アキラもまた、細めた目でじっとヒカルを見つめている。
 全身舐め尽くすような視線だった。ストイックさとは程遠い、欲に煽られた男の本能がそこにある。
 ヒカルは満足そうに微笑んで、そっと口唇を離した。するりと腕を外し、頭を屈めて、アキラの腹の下ですでに充分な角度を保っているそれに口唇を寄せた。
「! し、進藤っ」
 思わずアキラが漏らした制止の声も聞かず、ヒカルは大きく開いた口内にそれを咥えこんだ。
「くっ……」
 アキラが苦痛に似た声を漏らす。艶の含まれたその声に、ヒカルはアキラがどんな顔をしているのだろうと想像して胸を高鳴らせた。
 初めて含んだアキラの熱は思った以上にヒカルの口内をいっぱいにした。あまり奥に突っ込むと咽せてしまいそうなので、加減しながらそろそろと舌を動かしてみる。硬度がありながら柔らかい皮膚の表面は、不思議な感触だった。
 ぐ、とアキラがヒカルの髪を掴んだ。ヒカルは構わずに口を動かす。雑誌やビデオの見よう見まねで、決して上手くはないだろうが、それでも自分が触れられてキモチイイ場所を一生懸命舌先で舐め上げた。
「う、進、藤、もう、」
 アキラの手がヒカルの肩を掴んだ。離せ、と言っているのだろう。それでもヒカルは無視して舌と口唇を動かした。
 ヒカルができる限り奥までそれを呑み込んだ瞬間、ヒカルの髪を掴んでいたアキラの指に、にわかに力が込められた。
「進藤っ……」
 ぎゅっと収縮した熱が、次いでビクリと揺れる。その瞬間、ヒカルの口の中に何か生暖かいものが飛沫を散らした。その口内の違和感に一瞬顔を顰めるが、吐き出さないよう口に力を込める。……初めての味だった。
「し、進藤!」
 ようやく口を離したヒカルを、アキラが心配そうに覗き込んだ。
 ヒカルは口を開け、べっと舌を出してみせる。舌の上に、白く濁った液体が鎮座していた。
「す、すまない! ……出してしまって」
「ひーよ、ほのふもりらったから」
 口を開けたままもごもごと喋り、ヒカルは意を決したように目を閉じ、ごくりと口の中のものを飲み込んだ。
「うえ、喉に引っかかる」
「ししし進藤っ!」
 アキラが真っ赤になってヒカルを凝視している。
 その慌てふためく様子がおかしくて、ヒカルは思わず笑ってしまった。
「なんだよ」
「なんだよじゃないっ! そ、そんなもの飲むなんて、」
「でも、オエッってやられたらお前ヤじゃねえ?」
「いや、そりゃ、で、でも、」
「いいの、俺今日はそういう気分だったの」
 未だ喉に残る仄かに苦い液体を流そうと口をもごもごさせ、ヒカルは普段ならこんなこと絶対しないだろうな、と自分の痴態に呆れていた。
 手っ取り早くアキラを気持ちよくさせる方法がこれしか思いつかなかった。している時のアキラの顔が見えなかったのは残念だが。
 それでも、まだヒカルの身体には発散しきれない熱が燻っている。焦れたヒカルは、軽く放心したままのアキラに腕を伸ばした。
「塔矢、ベッド行こう」
「え、でも……」
 アキラはちらりと自分の腹の下を見やった。ヒカルも釣られて視線を落とし、くたりと小さくなったものを目にする。
 一度出してしまったから終わりとでも言う気だろうか。ヒカルはむっとして口を尖らせた。
「なんだよ、お前すぐ復活すんだろ。もう勃たねーって言うのかよ」
「いや、そんなことはないけど……でも、ボクは……早いから」
「早くてもいいじゃん、出しちゃったらまたしよ? 何回でもすりゃいいじゃん」
「進藤……」
 アキラは驚きを隠せない表情で、赤らんだ頬で戸惑うように視線を彷徨わせた。
 それからヒカルをちら、と見て、確かめるように首を傾ける。
「い、いいのか?」
「いいよ。いっぱいしよう」
「今日のキミはどうしたんだ……? 普段は一度でもう充分だって言うくせに」
「うるせえ、今日の俺は発情してんだよ。こんな機会もうないかもしんねーぜ? ありがたく受けとけよ」
「……そうするよ」
 アキラの顔から躊躇いが消えた。
 ふっと鋭くなった目の奥に、確かな朱を見たヒカルは、その瞳の強さに僅かに怯んだ。
 アキラは荒々しくヒカルの肩を掴み、噛み付くように口付けてきた。咄嗟のキスでうまく息を吸えなかったヒカルが、息苦しさに目をきつく瞑る。
 口唇を離し、立ち上がったアキラはきゅっとシャワーのコックを閉めた。水音が止み、流れっぱなしだった水の流れが緩やかに出口を目指す。
 アキラは無造作に濡れた前髪を掻き上げ、雄の目でヒカルを見下ろした。これまで見たことのないアキラのオールバックスタイルの髪が、彼から気品を奪い、荒さだけを露呈する。
 その男臭さにヒカルの身体が竦んだ。アキラはそんなヒカルの前で腰を屈め、背中と膝の下に腕を差し込んで細い身体を抱え上げた。
「わっ……」
 急に浮遊した身体に驚き、ヒカルは軽く脚をばたつかせた。
 アキラは構わずにシャワールームを後にし、戻ってきた部屋の中央で二人を待つベッドへとヒカルを落とす。
 その上に覆い被さってくる男の力の強さに、くらくらと眩暈を感じたヒカルが震えた声で戸惑いを漏らした。
「おまえ、力、こんなに……強かったっけ……?」
「最近はしっかり食事してる。また社に感謝だな」
 なんで社が、と聞き返すことができなかった。
 酷く乱暴な、それでいて熱のこもった口付けに言葉は吸い取られてしまった。






今回やりたかったこと→若のオールバック
16、7歳のがきんちょに何をやらせているのか……
二人とも今できる範囲で一生懸命頑張ってるようです。