TEENAGE EMOTION






 ヒカルとアキラの出会いは海王学園に入学して少し経ってからのこと。
 それぞれ目立つ存在だった二人は、お互いのことは見聞きしてはいたものの、クラスも立場も違うために口を聞いたことはなかった。
 それどころか、嫌悪感すら抱いていたのである。
 何しろ異端児と御曹司、生まれも育ちも違う二人の価値観は自分たちを取り巻く環境下で形成された。
 ヒカルから見たアキラは、苦労知らずの金持ちのおぼっちゃんで、アキラから見たヒカルは粗野で品のない下賤の者であった。
 そんな二人にも意外な共通項があった。
 それは、趣味が囲碁だったということ。
 そうとは知らず、偶然出向いた碁会所でばったり会ってしまった時、二人は自分の目を疑った。
 それが初対面だったと言うのに、その場でちょっとした小競り合いを起こしたヒカルとアキラは囲碁で勝負を始めた。
 お互い腕に自信はあったのだが、驚いたことに実力は伯仲していた。
 最後まで目まぐるしい攻防が続き、終局してみればアキラの僅か半目勝ち。
 悔しがったヒカルだったが、ヒカルの棋力に愕然としたアキラは再戦を申し込んだ。
 それをきっかけに、二人は時折碁会所で打ち合うようになった。
 ぶつかり合いながらの数々の対局を経て、力を認め合い、心を許すようになり、やがて二人は仄かな恋心を抱き始めた。
 先に耐え切れなくなったのはアキラだった。玉砕覚悟で告白したら、実はヒカルもアキラが好きでしたという黄金パターンを踏み、晴れて恋人同士となったわけである。
 幸せいっぱいの二人だったが、校内では恋人として振舞うわけにはいかなかった。
 何しろ男同士であるし、それに二人は学園でも人気を二分する有名人である。おまけにヒカルが会長に選出され、アキラとヒカルを支持する生徒たちの軋轢が大きくなり始めた。
 彼らを背負って立つ以上、二人は表立って親しく付き合う訳にいかず、それどころか犬猿の仲を演じながら、隠れて恋人同士の時間を楽しんでいるのである。



「ボクは構わないけれど……上からものを見るような発言は、彼らの気分を害する。キミに何かあったらボクが困る……」
「う……ン、だって、お前んとこのヤツら、態度、でけえし……アッ……、和谷は口うまくねえから、すぐ、ンッ、負けちまうだろ、んん!」
 生徒会長専用の肘掛けがしっかりした椅子の上、ヒカルは下半身を下着まで脱がされ、足を開かされてぐったりと背凭れに身体を預けていた。
 その正面に跪き、ヒカルの腹部で勃ち上がっているものを手と舌で弄くりながら、アキラは艶やかな瞳でちらりと目線を上に向ける。
 肘掛けにしがみつき、必死で声を抑えようとしているヒカルは、頬を紅潮させて何度も顎を仰け反らせる。
 そんなヒカルを満足そうに見つめたアキラは、ぐ、と親指の先を握っているものの先端に潜りこませた。
「アッ!」
「また和谷くんかい? あんまりキミの口から彼の名前を聞くと、ボクが嫉妬すること……知ってるだろう?」
「で、も、和谷は友達……あ、ん!」
「副会長よりも体育委員長の待遇のほうが上なんだ。……おしおきが必要だね」
 アキラは、ヒカルが先走って垂れ流したものですでに濡れている指を、開かせたヒカルの足の一番奥へと宛がった。
 そのまま怖気づいている蕾をこじ開けるように指先を挿し入れる。
「やっ!」
「少し声が大きいよ……。人に聞かせるのは惜しいから、もう少し我満して……」
 薄ら微笑みながら、アキラはぐいぐいと指を回すように中へ押し進める。痛みの中にも快楽があるのだろうか、ヒカルは苦痛に眉をゆがめながらも、時折アキラの動きに合わせてぴくぴくと口唇を震わせた。
「あ、やだ、塔矢、やめ……」
「嫌じゃないよね? イイんだよね? キミのでもうぐしょぐしょだよ。ボクの指、呑み込んでる」
「そ、んなこと、言うなっ……」
「余計に感じちゃう?」
 アキラはくすっと笑い、指を挿し込んだままヒカルの根本をぎゅっと握り締めた。
「あっ!」
 ヒカルはびくんと肩を浮かせて、涙交じりの悲鳴を上げる。
「イきたい?」
 アキラの意地の悪い視線から逃げるように目をきつく瞑ったまま、ヒカルは何度も首を縦に振る。アキラはふっと口元を歪ませ、ヒカルの中から指を引き抜いた。
 ヒカルは縋るような目でその指の行き先を追い、そんな自分に気づいて羞恥で顔を赤く染める。
 アキラはすっと立ち上がり、自身のベルトに手をかけた。
 前をくつろがせると、ヒカルがごくりと喉を鳴らしたのが分かる。
「口でして?」
 アキラが囁くと、一瞬躊躇ったヒカルは、開いていた脚を閉じてアキラへとそっと顔を寄せてきた。
 ギイ、と回転椅子が揺れる。
 ヒカルはアキラのものをおずおずと口に含み、慣れない仕草で手を添えて、口と舌を動かし始めた。
 口に集中すると手が止まり、手を動かすと口がおろそかになる。まだまだぎこちない奉仕だが、アキラはそんなヒカルを愛おしそうに細めた目で見下ろし、その柔らかい髪を優しく撫でた。
 やがてアキラが少し眉を顰め、ヒカルの肩を掴んで口を引き剥がす。そのまま背凭れに背中を打ったヒカルの両脚を抱え、剥き出しになった入口に硬くなった自分のものを押し込んだ。
「ああっ!」
 ヒカルがアキラの肩にしがみついてくる。
 アキラはヒカルを胸で受け止め、尻を抱えるように腰を打ち付けた。
 アキラの動きにがくがくと揺さぶられ、ヒカルはすすり泣くような声を漏らす。
 その声に徐々に艶が増し、ヒカルは堪えきれないというように首を横に振る。
「いいよ……イッても」
 アキラが腰の角度を少しだけ変え、より強くヒカルを貫くと、ヒカルは大きく顎を仰け反らせた。その白い喉にアキラが噛み付いた瞬間、びくんと震えたヒカルの身体が強張り、そしてじわじわ弛緩していく。
 アキラはヒカルを抱きかかえたまま、再びその髪を撫でた。ヒカルはアキラの肩に額を乗せて、甘えるように押し付けてくる。
「……よかった?」
「……ウン」
「でも、ボクがまだだから……もう少し動いていい?」
「……、ウン……」




 先ほどまでヒカルが座っていた椅子にアキラは腰を下ろし、その上でアキラに跨ったヒカルは身体を揺らしながら小さな嬌声をあげていた。
 アキラが腰を突き上げるたび、ヒカルの細い身体が大きく震える。
「会議の続き、しようか……?」
「あ……んっ」
「花壇、どうしようね……? 正直、緑化委員だけでは手に負えない広さだからね……」
「アッ、やっ、でも、花壇潰したくな、あっ」
「今度は緑化委員長の伊角くんを庇うのかい?」
「違、あん、だって、みんな、頑張って……整備してたから」
 アキラは微笑み、ヒカルの顔を両手のひらで包んで引き寄せた。
 荒い呼吸のせいですっかり渇いてしまった口唇にそっと口づける。
「キミは優しいね……。じゃあ、こうしよう。予定していた高価な花の株の購入を取りやめて、安いけれど見栄えのする花に変えよう。そうだな、なるべく世話の簡単なものがいい。それくらいは緑化委員に調べさせるといい」
「う、ンッ、」
「それで花壇用の予算を詰めて、余ったお金で業者を頼んで少し花壇を小さくしようか。去年花壇拡大に相当予算を振り分けているから、多少縮小されている今回でもなんとかいけると思うよ……」
「あ、アアッ、分かっ、た……っ」
 アキラはにっこり笑い、もう一度ヒカルに深く長いキスをして、一層強く腰を突き上げた。
 ヒカルが引き攣った声をあげ、二人の繋がった部分がぎゅうっと締まり、アキラもまた低く呻いて欲を解放する。
 しばしそうして抱き合っていた二人は、乱れた呼吸が落ち着くまでそうしていた。
 すでに外は薄暗くなっていた。






今回は本編でのタブーを振り切って
受け受けしいヒカルを解禁にしてみました……
実はリクエストに「遅漏アキラ」もちらっと含まれていたので
それも踏まえてやってみましたがいいのかしらこれ。
ろくな生徒会にならねえぞ。