ペンタトニックの筒

曲の分析と演奏

例えばナポリの和音を考える

たとえばハ長調でのDbM7->CM7は、I m#5thの列(SDM)->I majorの列(T)の、左への4列の移動だと思います。DbM7をどうしてI m#5thの列と思うか、というのが問題になるかもしれません。確かに、表を見てるとDbM7はbII majorの列でもいいかなって気もしますが、縦の連中に代理させて弾いてみたり、5音をバラバラ弾いてみたりすると、I m#5thの列の方がしっくりきます。横に5つ以上の移動はなんとなくイヤだし。

VII fl6thVII fl7thVII minorVII m#5thI majorI fl6thI fl7thI minorI m#5thbII majorbII fl6th#I fl7th#I minor
#IV fl7th#IV minor#IV m#5thV majorV fl6thV fl7thV minorV m#5thbVI majorbVI fl6thbVI fl7th#V minor#V m#5th
#I minor#I m#5thII majorII fl6thII fl7thII minorII m#5thbIII majorbIII fl6thbIII fl7thbIII minor#II m#5thIII major
#V m#5thVI majorVI fl6thVI fl7thVI minorVI m#5thbVII majorbVII fl6thbVII fl7thbVII minorbVII m#5thVII majorVII fl6th
III majorIII fl6thIII fl7thIII minorIII m#5thIV majorIV fl6thIV fl7thIV minorIV m#5thbV major#IV fl6th#IV fl7th

和音構成音を含むペンタトニック

DbM7を構成する4音をすべて含むペンタトニックはありませんが、横に並ぶI m#5thの列とbII majorの列はそのうち3音を含んでいます。あとの列は2音以下です。I m#5thに含まれるIVm(Fm)は、DbM7のルート抜きです。bII majorに含まれるbII(Db)は、DbM7のM7抜きです。
列の含む和音構成音の数は、機能を判断するひとつの目安になります。

出身スケールと含まれるペンタトニック

DbM7をDbリディアンだとかCフリジアンだとか思うと、I m#5thの列とbII majorの列とbII fl6thの列の、3つの横に並ぶペンタトニックがそれに含まれています。一般にドレミファソラシドの音程関係を持つ7音には、この表で隣り合わせる3つのペンタトニックが含まれています
出身スケールとペンタトニックとの共通性は、機能を判断するひとつの目安になります。

解決しないダブル・ドミナント

みたいな妙な言い方があるようですが、例えばC->D(7)->F->Cのようなチェンジは以下のように考えます。ここでのD(7)は空飛ぶドミナントって感じではなく、列の移動と思います。

VII fl6thVII fl7thVII minorVII m#5thI majorI fl6thI fl7thI minorI m#5thbII majorbII fl6th#I fl7th#I minor
#IV fl7th#IV minor#IV m#5thV majorV fl6thV fl7thV minorV m#5thbVI majorbVI fl6thbVI fl7th#V minor#V m#5th
#I minor#I m#5thII majorII fl6thII fl7thII minorII m#5thbIII majorbIII fl6thbIII fl7thbIII minor#II m#5thIII major
#V m#5thVI majorVI fl6thVI fl7thVI minorVI m#5thbVII majorbVII fl6thbVII fl7thbVII minorbVII m#5thVII majorVII fl6th
III majorIII fl6thIII fl7thIII minorIII m#5thIV majorIV fl6thIV fl7thIV minorIV m#5thbV major#IV fl6th#IV fl7th

I major->II major->IV major->I majorです。II majorではm7の音(I majorのルートでもある)が足されて、IIミクソリディアン的になることも多いようです。Iというキーから見ると、ちょっと左にハミ出すことになります。が、よく見ると、ピンと来るかどうかは別として、他のキーから見た理解も出来そうです。

VI(A)のキーだと思うと、トニック・マイナー->サブ・ドミナント->サブ・ドミナント・マイナー->トニック・マイナー。
Dは、Amキーでよく出てくるDmコードがメジャーになったような感じです。

II(D)のキーだと思うと、ドミナント・マイナー->トニック->トニック・マイナー->ドミナント・マイナー。
これはどうもよくわかりません、Dsus4->D->Dm->Cみたいなイメージでしょうか。

ところでII majorの右側の列に対する特徴的な音はM3、I(C)のキーで言うとファ#です。演奏の際には、この音を大切にします。

ダイアトニック的な移動

Ionianの上に展開されるダイアトニック・コード達は、I Ionianを構成するVII m#5th、I major、I fl6thの3つのペンタトニックとその周辺を表現します。

VII fl6thVII fl7thVII minorVII m#5thI majorI fl6thI fl7thI minorI m#5thbII majorbII fl6th#I fl7th#I minor
#IV fl7th#IV minor#IV m#5thV majorV fl6thV fl7thV minorV m#5thbVI majorbVI fl6thbVI fl7th#V minor#V m#5th
#I minor#I m#5thII majorII fl6thII fl7thII minorII m#5thbIII majorbIII fl6thbIII fl7thbIII minor#II m#5thIII major
#V m#5thVI majorVI fl6thVI fl7thVI minorVI m#5thbVII majorbVII fl6thbVII fl7thbVII minorbVII m#5thVII majorVII fl6th
III majorIII fl6thIII fl7thIII minorIII m#5thIV majorIV fl6thIV fl7thIV minorIV m#5thbV major#IV fl6th#IV fl7th

コード別によく見てみると

のような感じでしょうか。ちょっと無理すれば、どのコードもその周辺でも使えそうです。ダイアトニック上の移動は、この3つの列とその間をウロウロしているようなニュアンスと理解します。ちなみにV7は、ここでは空飛ぶドミナントというよりは、Vミクソリディアン的な響きと考えられます。V major(=VII m#5th)ペンタトニックは、そのままではIのキーのルートを持たないので、すこし調から離れた感じにはなります。

トニックとサブ・ドミナントの弾きわけ

上の話にも関連しますが、カッコいいボイシングを追求してると、たまにCとDmの区別がつかなくなったりします(自分だけ?)。弾きわけたいと思うときには、トニックとサブ・ドミナントの違いは、ペンタトニックの筒では単純かつ明瞭です。右側の列に対してトニックを特徴づける音はM3、左側の列に対してサブ・ドミナントを特徴づける音はP4なので、トニックとサブ・ドミナントの行き来は、ハ長調ならミとファの行き来によって表現されます。特にファはトニック感を阻害するようですね。必要性十分性の観点からは、

といえそうです。
他の機能間の弾きわけも、同じ原理で考えられますね。

Hey Joeの4度逆行回転

は、スグわかります(笑)。I love Jimi!

ブルースはポリモード?

ブルース的な響きは、メジャー・ペンタトニックとマイナー・ペンタトニックが混ざったモードのようです。それだけだとb5/#4の音がありませんが、足せばいいだけの話です。I7とIV7とV7とを行ったり来たりする時には、想定するポリモードも以下のように変化します。

VII fl6thVII fl7thVII minorVII m#5thI majorI fl6thI fl7thI minorI m#5thbII majorbII fl6th#I fl7th#I minor
#IV fl7th#IV minor#IV m#5thV majorV fl6thV fl7thV minorV m#5thbVI majorbVI fl6thbVI fl7th#V minor#V m#5th
#I minor#I m#5thII majorII fl6thII fl7thII minorII m#5thbIII majorbIII fl6thbIII fl7thbIII minor#II m#5thIII major
#V m#5thVI majorVI fl6thVI fl7thVI minorVI m#5thbVII majorbVII fl6thbVII fl7thbVII minorbVII m#5thVII majorVII fl6th
III majorIII fl6thIII fl7thIII minorIII m#5thIV majorIV fl6thIV fl7thIV minorIV m#5thbV major#IV fl6th#IV fl7th

それにしても、足せばいいだけのb5/#4の音は、ホントはどこから来るのかちょっと気になります。I7でのbIII major(=I minor)からみたm3の音という説は、すこしだけ説得力がありますね。短3度の重力というか。でも歌うときは、もうちょっと低めが気分よかったりもして、これ以上足を踏み入れるとヤバそうな領域です。

It Could Happen to You

スタンダード曲を、時系列的にすこし追ってみました。It Could Happen to Youの後半(17小節目以降)です。

コードEbC7Fm7D7EbAbGm7C7Fm7Abm7Gm7C7Fm7Bb7Eb
対応する列I majorDom/VIII minorDom/VIII majorIV majorIII m#5thDom/VIII minorIV minorIII m#5thDom/VIII minorDom/VI major
言い換え  (=I fl6th)  (=I fl6th)(=I major) (=I fl6th)(=I m#5th)(=I major) (=I fl6th)  

こうしてみると、ドミナントの表記があいまいですね。たとえば、4小節目のDom/VIIは「ルートがVIIでIII minorに4度進行しながら解決する(フリをして実はI majorへいく)ドミナント」ぐらい言ってもよさそうですが、放棄してます。ドミナントの表記は、考えると奥が深くて面倒そうです。どなたかよいのを思いついたら教えて下さい。

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