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ロシア人の名前


1.ロシア人の3つの名前

ファーストネーム、親につけてもらう名 имя イーミャ
父称 父親の名から自動的に決まる名 отчество オーチェストヴァ
ファミリーネーム、家の名、苗字 фамилия ファミーリヤ

この中で、普段私たちに馴染みのないものは、真ん中の「父称」です。
これは、普通欧米で言うところの「セカンドネーム」とは全く異なるものです。

しかし、スポーツ、芸術などで目にするロシア人は、「名」と「姓」しか一般に呼ばれません。
ということは、国際舞台に立つ時には「父称」はあえて省いているということでしょう。

この3つの名前を並べて言う場合には、名+父称+姓の順が普通ですが、
公式の場では姓+名+父称の順になることもあります。

<例> (名+父称+姓、の順で)
ミハイール = スィルギェーイェヴィチ = ガルバチョーフ
Михаил = Сергеевич = Горбачёв
ゴルバチョフ前ロシア大統領
ボリース = ニコラーエヴィチ = エーリツィン
Борис = Николаевич = Ельцин
エリツィン現ロシア大統領
ヴァレンティーナ = ヴラディーミロヴナ = テレシュコーヴァ
Валентина = Владимировна = Терешкова
ロシアの女性宇宙飛行士
ピョートル = イリィーチ = チェイコーフスキィ
Пётр = Ильич = Чайковский
「シェルクーンチク」の作曲者

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2.「名前」と愛称形

マリアのロシア語綴りは「Мария」です。
アクセントが「и」の部分にきて、「マリーヤ」という発音になります。

ロシア人の名前(имя)は新しく考案するということは普通なく、
原則としてすでにある伝統的なもののなかから選んでつけられます。
よく聞く名前(左)とその愛称形(右)をあげておきましょう。

女性名 男性名
マリーヤ
Мария
マーシャ
Маша
ミハイール
Михаил
ミーシャ
Миша
ナターリヤ
Наталья
ナターシャ
Наташа
ユーリィ
Юрий
ユーラ
Юра

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3.「父称」とは?

父称は、父親の名から自動的に派生します。
「〜の息子」「〜の娘」といったニュアンスになります。

父の名 息子の父称 娘の父称
スィルギェーイ
Сергей
スィルギェーイェヴィチ
Сергеевич
スィルギェーイェヴナ
Сергеев
ニコラーイ
Николай
ニコラーエヴィチ
Николаевич
ニコラーエヴナ
Николаевна
ドミートリィ
Дмитлий
ドミートリェヴィチ
Дмитлиевич
ドミートリェヴナ
Дмитлиевна


 ●「名 + 父称」という呼び方について
ロシア語では相手に呼びかける場合、若者同士や親しい友人の間であれば、
名前(имя)や、そこから派生する様々な愛称形を使うのが普通ですが、
目上の人に敬意をこめて呼びかける時や、年配の人の間では、
имя - отчество 「名 + 父称」の形を使います。この場合、
前には何の敬称もつけませんが、これだけで敬意や親近感のこもった呼びかけになります。

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4.「姓」は男女で変わる

ロシア語の姓の大部分は、男性・女性・複数を語尾で区別します。
たとえば、夫婦で同姓を名乗っていても、語尾だけは違うという事態になります。

男性 女性 複数
ガルバチョーフ
Горбачёв
ガルバチョーヴァ
Горбачёва
ガルバチョーヴィ
Горбачёвы
エーリツィン
Ельцин
エーリツィン
Ельцин
エーリツィン
Ельцин
(変化しないものもある)
テレシュコーフ
Терешков
テレシュコーヴァ
Терешкова
テレシュコーヴィ
Терешковы
チェイコーフスキィ
Чайковский
チェイコーフスカヤ
Чайковская
チェイコーフスキイェ
Чайковские
ブリューソフ
Блюсов
ブリューソヴァ
Блюсова
ブリューソヴィ
Блюсовы

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5.マリアのロシア名

もし、マリアが母方の姓を名乗っていなかったら…と考えたことはありませんか?
マリアがロシア人の父親の姓を正式に名乗った場合の名前を、
「サクラ大戦・前夜」に載っていた父親の名前から考えてみましょう。

まず、マリアの父親の名前。
  ブリューソフ = ワリー = ドミートリエビッチ
これは、「姓+名+父称」の順に並んでいることが、一見してわかります。
では、一般的な形に並べ替えてみましょう。
  ワリー = ドミートリエビッチ = ブリューソフ
さらに、ロシア風の発音表記で書き換えます。
  ヴァーリヤ = ドミートリェヴィチ = ブリューソフ
  Валя = Дмитлиевич = Блюсов

「ワリー」という名が辞書にありませんので、かわりに「ヴァーリヤ」をあてはめてみました。
既にある伝統的な名からつける、というロシア人の名前の性格上、
辞書に載っていないということはあまりないはずなのですが。

しかし、この「ヴァーリヤ」も正式名ではなく愛称形なのです。
正式名の形で「ワリー」に近いものは見当たりませんでした。
  (ちなみにロシアの文字にはアルファベットの「W」に相当するものがないので、
   「ワ」は「ヴァ」に置き換えられます)
では、「ヴァーリヤ」はどんな名前の愛称形でしょう。
該当する名前は3つあります。
  ヴァレンティーン Валентин
  ヴァレーリィ Валерий
  ヴァレリヤーン Валерьян


実は、ロシアの著名人で「ヴァレーリィ = ブリューソフ」という人が過去に実在しています。
そこからとったのでは、と勝手に解釈することにしましょう。(父称はぜんぜん違うのですが)

  ヴァレーリィ = ドミートリェヴィチ = ブリューソフ
  Валерий = Дмитлиевич = Блюсов


さて、ここから父称をもらって、姓を女性形に書き換えて、マリアのできあがりです。

  マリーヤ = ヴァレーリェヴナ = ブリューソヴァ
  Мария = Валериевна = Блюсова


■「ブリューソフ」は「名」じゃなく「姓」なんですよー。前夜で「名」のように扱っていたけど。

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(おまけ) 革命軍の隊長の不思議

  ユーリー = ミハイル = ニコラーエビッチ

これが、マリアが死なせてしまったと悩んでいた革命軍の隊長の名前だと、
某「サクラ大戦・前夜」では書かれています。が…

ご覧になればおわかりのように、
  「ユーリー」「ミハイル」も「名」である。
  「ニコラーエビッチ」は「父称」である。
というわけで、この人、姓がありません。
それについては、次章「登場人物の名前の由来」の隊長の項目にて改めて触れます。

話は逸れますが、マリアをだました悪い男、
  バレンチーノフ = ウラジミール = アレクサンドロビッチ
ニューヨークでいきなり彼のフルネームを叫んだマリアは、
「名 + 父称」での呼びかけで敬意や親近感がこもるという視点から見ると、
この男に敬意も親近感も持っちゃいなかったのか、という疑問がぬぐえません。(笑)
「バレンチーノフ」という姓が辞書にはなかったのですが、
調べたら実在人物に「バレンチーノフ」という人がいました。
詳しくは、次章「登場人物の名前の由来」のバレンチーノフ氏の項目にて改めて触れます。


ところで、なぜロシア人登場人物の名前が皆「姓+名+父称」の並びにわざわざしてあるのか。
考えられることがひとつあります。
Aかほりさとる氏が「NYのマリア」を書くにあたって参考資料になさった「黒い夜白い雪 ロシア革命 1905-1917」という本で、人物索引がすべて「姓+名+父称」にしてあるのです。(正確には「姓、名+父称」の表記でした)
歴史上の人物は姓で呼ばれることが多いことから、索引としてはその方が都合がよいのでしょう。
この本から登場人物名をとってきたふしが伺えることから、失礼ながらあまり考えずに索引の表記どおり名前を引っ張ってきただけ、ではないかと考えます。
勘弁してくれよ、Aかほり…(T_T)

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<参考資料>
NHK 気軽に学ぶロシア語  沼野充義  NHK出版
ロシア語辞典  博友社


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